2025年10月中旬、アメリカでは再び「政府機関閉鎖(Government Shutdown)」が発生しました。
連邦政府の一部機関が一時的に業務を停止し、数十万人の公務員が自宅待機を余儀なくされています。ニュースでは毎年のようにこの言葉を耳にしますが、「なぜこの時期に」「なぜいつも繰り返されるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、2025年10月までの最新動向を踏まえながら、
- 政府機関閉鎖の仕組みと原因
- 今年(2025年)の閉鎖に至った経緯と政治対立の背景
- なぜ毎年のように9月末に危機が訪れるのか
- そして、米国株・日本株への影響
をわかりやすく整理します。
個人投資家が取るべきスタンスについても最後に触れます。
1. 政府機関閉鎖とは何か:アメリカ政治の「年末恒例行事」
アメリカの政府機関閉鎖とは、連邦議会が新年度の予算を可決できず、政府の支出権限が一時的に失効する状態を指します。
アメリカの会計年度は10月1日に始まるため、9月末までに予算が成立しなければ、新年度初日から政府機関の多くは活動を停止せざるを得ません。
閉鎖が始まると、「不要不急」と判断された部署が業務停止になります。国立公園や一部の行政窓口、統計データの発表などが止まり、約70万〜80万人の連邦職員が無給で自宅待機になります。
ただし、軍や警察、空港管制、社会保障などの「必要業務」は継続されるため、国家機能が完全に麻痺するわけではありません。
過去最長の閉鎖は2018〜2019年の35日間。今回も当初は短期解決が見込まれていましたが、政治的な対立が深刻化し、すでに長期化の兆しを見せています。
2. 2025年版「政府閉鎖」の経緯:つなぎ予算が何度も否決された理由
2025年度(FY2026)の予算協議は、春の段階から難航していました。
本来であれば夏までに歳出法案(12分野)が順次可決されるはずでしたが、今年は共和党と民主党の対立が激化し、どの分野も進展がないまま9月を迎えました。
9月に入ってから、政府機能を維持するための**「つなぎ予算(Continuing Resolution)」**が3回提出されました。
- 第1案(9月9日):共和党主導で7週間分の暫定予算を提出。しかし、医療費補助の削減と移民取締強化を盛り込んだため、民主党が反対し否決。
- 第2案(9月19日):民主党側が対案を提示。社会保障や教育予算を守る内容でしたが、国防費の増額を除外したため共和党が反対し否決。
- 第3案(9月29日):最終期限直前の「超短期版CR(2週間延長)」も、下院では可決されたものの上院で失敗。
結果として、10月1日午前0時(新年度初日)をもって歳出権限が切れ、政府機関の一部が閉鎖されました。
これはトランプ政権下で7年ぶり、アメリカ史上22回目の政府閉鎖です。
閉鎖後も、上院では10月6日と10月10日に修正案が採決されましたが、いずれも60票に届かず再び否決。
トランプ大統領は「民主党が医療補助に固執する限り、妥協はない」と発言し、政治的駆け引きは続いています。
3. なぜこの時期に起きるのか:アメリカの「財政カレンダー構造」
日本では年度末が3月ですが、アメリカの会計年度は10月1日から翌年9月30日まで。
つまり、9月末が「予算の期限」なのです。
さらに、アメリカでは12分野の歳出法案(防衛・教育・厚生など)をそれぞれ個別に議会承認する仕組みになっており、1つでも通らなければその分野の支出が止まります。
この制度が「部分閉鎖」や「連鎖的停止」を引き起こす原因となります。
また、1970年代以降、すべての歳出法案が期限内に可決された年はわずか4回しかありません。
つまり、「9月末ギリギリまで揉める」のがアメリカの常態化した政治スケジュールなのです。
4. 毎年恒例化する理由:党派対立と選挙戦略
政府閉鎖が毎年のように繰り返される理由は、単なるスケジュール遅延ではありません。
背景には、共和党と民主党の深いイデオロギー対立があります。
- 共和党:小さな政府・財政緊縮を掲げ、社会保障や医療補助を削減して防衛や国境警備を優先。
- 民主党:大きな政府・福祉重視を訴え、医療や教育への支出を守ろうとする。
特に大統領選や中間選挙を控える年には、「相手に譲歩したくない」という政治的メッセージ性が強まり、妥協が困難になります。
2025年は翌年の**大統領選挙(2026年)**を意識し、両党とも支持基盤へのアピールを優先しているのです。
結果として、「閉鎖を避けたい」よりも「相手を非難したい」という構図になり、議会が機能不全に陥ります。
ある意味、政府閉鎖は政争の副産物なのです。
5. 主な対立テーマ:医療・移民・ウクライナ支援・防衛費配分
2025年の政府閉鎖を引き起こした主な論点は以下の通りです。
(1)医療費補助の削減
共和党は、低所得者向けの公的医療保険(メディケイド)や医療補助金(ACA税額控除)の削減を主張。
民主党はこれに強く反発し、「1,000万人が無保険になる」と訴えています。
(2)移民政策
国境警備強化、特にメキシコ国境での不法移民取締をめぐって意見が分裂。
トランプ政権は壁建設や強制送還に予算を割り当てたい一方、民主党は「人道的対応」を求めています。
(3)ウクライナ支援
共和党の一部は「ウクライナ支援は国内財政の負担」として削減を主張。
これに対し、民主党や上院の一部共和党は「自由と民主主義を守るため継続すべき」と反論。
結果、支援予算の扱いが政治的カードになっています。
(4)防衛費と国内支出のバランス
共和党は防衛費増額を求め、民主党は教育や福祉を優先。
それぞれ譲らないため、全体の歳出枠が決まりません。
このように、「財政の規模」そのものよりも、**「お金の使い道」**で対立していることが根本的な問題です。
6. 投資家が取るべき対応:焦らず、分散と長期で構える
アメリカ政府閉鎖は短期的には市場の不安要因ですが、長期的には一時的な政治イベントにすぎません。
過去のデータでも、閉鎖が終わると株価は数週間で回復しています。
投資家が意識すべきポイントは次の3つです。
- 過剰反応しないこと
短期のニュースでポジションを大きく動かさない。閉鎖は「政治ショー」であり、恒久的な経済危機ではありません。 - ディフェンシブ銘柄を活用すること
医薬品・電力・インフラなど、政府支出や景気動向に左右されにくい銘柄は底堅く推移します。 - 長期投資視点を維持すること
閉鎖の影響で一時的に売られた優良株(特にハイテク・防衛・半導体など)は、むしろ買い場になる可能性があります。
7. まとめ:政府閉鎖は「政治リスク」ではあるが「投資機会」にもなる
今回の2025年の政府機関閉鎖は、アメリカ政治の構造的なねじれを象徴する出来事です。
つなぎ予算が三度否決された背景には、医療や防衛、移民政策をめぐる価値観の違いが横たわっています。
この政治対立はすぐには解消されませんが、歴史的に見ても市場は最終的に冷静に戻っていきます。
米国株は依然として世界経済の中心であり、日本株もその影響を強く受けます。
閉鎖が長引けば一時的に調整局面が来るかもしれませんが、長期投資家にとっては良いエントリーポイントになり得ます。
政治の混乱は市場のノイズであり、慌てず・分散し・継続する投資こそが最も堅実な戦略です。
今回のアメリカ政府閉鎖も、その教訓を再確認する機会と言えるでしょう。

