トランプ氏の「対日30~35%関税」発言で日本株はどう動く?シナリオ別投資戦略

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はじめに:発言の背景と市場の反応

2025年7月2日朝、トランプ大統領が日本からの輸入品に対して「30%か35%、あるいはわれわれが決定する数字」の関税を課す可能性に言及しました。これは同氏が4月初旬に表明した24%の関税率を大幅に上回る水準であり、市場には大きな警戒感が広がっています。実際、4月に「相互関税」が発表された際には日経平均株価が1日で2644円下落し、史上3番目の下げ幅を記録するなど、日本株に大きな衝撃が走りました。こうした状況下で投資家は戦略の見直しを迫られており、本稿では考えられる複数のシナリオごとに日本株投資への影響と対応策を考察します。

今回の関税示唆について、市場関係者の中には「トランプ氏お得意のブラフ(はったり)ではないか」と見る向きもあります。しかし、7月9日に設定された交渉期限までは不透明感が一段と高まりやすく、投資判断が難しい局面となっています。以下では、(1)関税が現実に導入される最悪シナリオ、(2)発言が選挙や交渉を睨んだブラフに過ぎないシナリオ、(3)日米交渉で関税導入が回避されるシナリオ、の三つを想定し、それぞれに応じた短期・中期・長期の投資戦略を解説します。特に国内株式に絞り、輸出依存型セクターと内需型セクターの明暗、そして未投資の方既に日本株を保有している方の両者に向けたアドバイスを示します。

シナリオ1:関税が実際に導入された場合 –「最悪」のケースに備える

● シナリオ概要・市場への影響:
最も懸念されるのは、トランプ氏の発言通りに30~35%もの高関税が日本製品に課されるシナリオです。この場合、米国向け輸出に依存する企業の業績悪化は避けられず、日本株市場全体にも急激な下押し圧力がかかるでしょう。実際、今年4月初旬に相互関税が表明された直後、日経平均は数日で一時13%近く急落する大波乱となりました。今回も関税発動となれば同様の“トランプ関税ショック”が再来し、リスク回避の動きから急激な株安・円高が進む可能性があります。輸出企業の収益悪化懸念に加え、安全資産とされる円が買われて円高が進行すると、海外収益が目減りするため輸出株には二重の逆風です(実際に米関税への警戒からドル安・円高が進み日本株売りを促す動きも見られています)。

特に自動車、電機(電子機器)、機械といった輸出比率の高いセクターは真っ先に打撃を受けるでしょう。例えばトヨタ自動車は、米関税の影響で2025年度の営業利益が前年より2割減少する見通しを発表しました。4~5月のたった2ヶ月間で関税コスト約1800億円が発生したとも試算しており、米国市場頼みの収益構造が大きなリスクとなっています。同様に、北米売上高の大きいメーカーほど業績下振れリスクが高まるでしょう。輸出各社は対米輸出減少分を他地域で補完したり、生産拠点を海外移転するなどの対応を迫られますが、短期的な利益圧迫は避けられません。また投資家心理も冷え込み、外国人資金の日本株撤退が進めば、指数全体が大幅調整する展開も考えられます。

● 短期(~数週間)の戦略:
この最悪シナリオが現実味を帯びた場合、短期的には防御姿勢を最優先すべきです。すでに日本株を保有している投資家は、特に米国依存度の高い銘柄の比重を引き下げることを検討しましょう。自動車・電子部品・機械などの株は急落が予想されるため、早めの利確・損切りやヘッジ(先物やインバースETFの活用)で下落リスクを和らげる手段があります。一方、まだ日本株を保有していない方や追加投資を考えている方は、安易な押し目買いを避け、様子見が無難です。急落局面ではボラティリティが高まり、思わぬ含み損を抱えるリスクがあります。慌てて飛び乗らず、まずは状況の推移を見極めましょう。

ただし短期急落時でも、内需・ディフェンシブ系セクターの一角は相対的に底堅さを見せる可能性があります。4月の急落局面でも、小売業、食品、サービス業、鉄道などの内需株や医薬品・通信などディフェンシブ株は値上がり上位に顔を出しました。すでに保有するディフェンシブ銘柄(例:電力・ガス、通信、医薬品、食品、小売など)がある場合は、慌てて手放す必要はないでしょう。未保有の場合でも、「避難先」としてディフェンシブ株への分散投資を検討する価値があります。ただし短期的には市場全体がパニック的に売られる可能性もあり、内需株でも一時的に巻き込まれる点には注意が必要です。

● 中期(数ヶ月~1年)の戦略:
関税発動後しばらくすると、市場も初期ショックから落ち着きを取り戻し、冷静に銘柄選別が行われる段階に移行します。中期的なポイントは、「悲観が行き過ぎた優良銘柄」を狙う視点です。仮に関税が現実となっても、すべての輸出企業が一様に業績悪化するわけではありません。例えば、北米依存度が相対的に低いメーカー(自動車でもスズキは北米販売が小さく影響軽微と言われます)や、海外展開を多角化して米国依存から脱している企業、価格転嫁力が高く関税を吸収できる企業などは、中長期では売られ過ぎの買い好機となり得ます。また、為替が円高に振れ過ぎた場合には日本政府・日銀が為替介入や金融緩和策で対応する可能性もあり、中期的には円高是正がなされる余地もあります。そのため、中期視点では過度に悲観せず、政策対応や企業の適応力を見極めつつ優良株を安値拾いする戦略が有効でしょう。既存ホルダーは、短期に売りすぎたポジションを中期では買い戻すことも検討できます。ただし米国との貿易交渉が泥沼化するリスクもあるため、リスク管理を怠らず段階的に投資するのが賢明です。

● 長期(数年単位)の戦略:
長期的には、関税戦争の行方次第で日本企業のビジネスモデルやグローバル戦略が変化していくでしょう。仮に高関税が恒久化する最悪の状況でも、日本企業は生き残りを図るために生産拠点の現地化や市場シフトを加速させると考えられます。例えば、自動車各社は北米現地生産への投資を拡大し、米国向け輸出台数そのものを減らすことで関税影響を和らげるでしょう。同時に東南アジアや欧州など他の有望市場でシェア拡大を図り、米国依存からの脱却を進める可能性があります。このように企業努力や国の支援策(輸出企業への減税や補助金、FTA推進など)によって、時間の経過とともに業績は底入れ・回復していくシナリオが考えられます。

長期投資家にとって重要なのは、「関税ショックで一時的に低迷した優良企業を安く仕込むチャンス」と捉える視点です。短期的な関税ダメージがあっても、中長期で見れば技術力やブランド力のある日本企業が大きく価値を毀損する可能性は低いでしょう。むしろ悲観相場では本来堅調な内需株まで巻き添え安となるケースもありえます。例えば住宅や金融など国内経済連動株も連鎖的に売られる局面があれば、長期目線では拾い場となるかもしれません。まだ日本株を保有していない長期志向の投資家であれば、日本経済の基盤を支える優良企業(輸出・内需問わず)が割安となったタイミングで段階的にポートフォリオに組み入れる戦略が有効です。一方、既に日本株を保有する長期投資家は、目先の評価損に動揺せずホールドを貫くことも選択肢です。ただし、保有銘柄の中で構造的に逆風が強まる業種(関税の直接標的となる業種など)があれば、将来の成長性を見極めつつポートフォリオを入れ替えることも検討しましょう。いずれにせよ、長期では「選別」と「忍耐」が鍵となります。関税という逆風に耐えうる企業を選び、中長期の成長を信じて腰を据える姿勢が求められます。

シナリオ2:発言が選挙向けのブラフだった場合 –「狼煙」で終わるケース

● シナリオ概要・市場への影響:
次に考えられるのは、今回の関税言及が政局・選挙を意識した政治的ブラフに過ぎず、実際には高関税が導入されないシナリオです。トランプ氏は以前から強硬な発言で交渉相手に揺さぶりをかけるスタイルで知られており、市場でも「いつものブラフではないか」との声が上がっています。この場合、7月9日の交渉期限まで市場は神経質な動きとなるものの、期限を過ぎても関税発動がなければ安堵感から株価は急速に持ち直す展開が期待できます。実際、4月の相互関税ショック後には市場の過剰反応を見てトランプ政権が軟化姿勢を見せ、一時関税を90日間停止して各国と交渉すると発表した経緯があります。この「譲歩」により市場は徐々に落ち着きを取り戻しました。同様に、今回も最終的に関税が回避されれば、日本株の下落は一時的で済み、その後は基調の強さを取り戻す可能性が高いでしょう。

もっとも、ブラフであったとはいえ一度示された強硬姿勢は「またいつ翻意して関税を持ち出すか分からない」という不信感を市場に残します。特に外国人投資家は政治リスクを嫌うため、しばらくは日本株に慎重姿勢を保つかもしれません。また米国が他国(例えば欧州や中国)への関税強化に踏み切るような場合、波及的に日本企業も影響を受ける可能性があります。したがってブラフで終わったからといってリスクがゼロに戻るわけではなく、一定のリスクプレミアムは残存すると考えられます。

● 短期の戦略:
このシナリオでは、「関税が実施されるかも?」という不安がある短期~直近期間はやや防御的に構えつつ、過度な悲観売りは避けるスタンスが有効です。既に株を持っている投資家は、短期的な値下がりに狼狽して優良株を手放すことは避けたいところです。発言直後に株価が下振れしたとしても、関税未実施が明確になれば値戻しする可能性が高いため、一時的な含み損に耐える余裕も必要です。むしろ、手元資金に余裕があるなら押し目買いの好機と捉えることもできるでしょう。例えば輸出関連株が過剰に売られ割安水準になれば、ブラフ見極め前提ながら一部買い増しを検討する価値があります。短期トレード志向の方であれば、悲観がピークに達した局面(交渉期限直前など)で逆張りエントリーし、無風通過後のリバウンドで素早く利食いするといった戦術も考えられます。ただし「万が一」のシナリオ1に備え、信用取引のレバレッジをかけ過ぎない、損切りラインを明確にしておくなどリスク管理は徹底してください。

一方、まだ日本株を保有していない方の場合、短期的な急落があれば少しずつ試し玉を入れるのも一案です。全力投入は避けつつ、「関税は結局ブラフで終わるだろう」と判断できるなら、下がった局面で優良株を拾い始めることで、後の急反発時に恩恵を得られます。ただしこちらもリスクはゼロではないため、投入資金は段階的にし、常にシナリオ変更(関税実行)の兆候がないか注視しましょう。

● 中期の戦略:
もし交渉期限を過ぎても関税が発動されなければ、市場は次第に通常運転へと回帰していくでしょう。中期的には、日本株は本来の企業業績や経済指標に基づくトレンドを再開する見通しです。直近では日本企業の業績や景況感は底堅く、また世界的なハイテク株高の流れもあって日経平均は年初来高値圏にあります。その上昇トレンドが一時中断されていたに過ぎないのであれば、関税リスク解消後には再び上昇軌道に乗る可能性が高いです。

したがって中期戦略としては、元の強気スタンスを徐々に再構築することになります。既存ホルダーの方は、一度ヘッジ目的で売却していた輸出株や景気敏感株があれば買い戻しを検討しましょう。特に、自動車・電機などは関税懸念で売り込まれていた分、リスク消滅後にはリバウンドが期待できます。ただし、仮にブラフだったとしてもトランプ氏が再び強硬策をちらつかせるリスクは残るため、一気に強気に振り切るのではなく慎重にポジション調整することが大切です。たとえば、内需株中心に組んでいたポートフォリオに対し、徐々に輸出型の比率を戻していく、為替ヘッジ付き投信から為替オープンのものに切り替える等、段階的な対応が考えられます。

新規の投資家にとっては、中期的には日本株市場に再び参加しやすい環境が整うでしょう。関税リスクで二の足を踏んでいた海外投資家も戻ってくれば相場全体の追い風になります。成長期待の高い日本企業や、割安に放置されていた優良株に対しては、このタイミングでエントリーを検討できます。特に、国内外の景気回復や技術トレンドの恩恵を受けるグロース株や、配当利回りが高く安定収益を上げるバリュー株などは、中期の有望候補です。「関税」のような特殊要因が一巡した後は、こうした本来の投資テーマに資金が戻りやすいため、腰を据えて優良株を選別しましょう。

● 長期の戦略:
ブラフで終わった場合、長期的には「嵐が一過性だった」形となり、日本経済・企業業績への直接的な悪影響は残りません。このシナリオでは、長期投資の基本に立ち返り、日本企業の競争力と成長性に着目した資産運用を継続すればよいでしょう。輸出産業も関税リスクから解放され、本来の実力が業績に反映されるようになります。自動車などの主力輸出企業も、不透明感が晴れることで設備投資や研究開発に安心して取り組め、中長期の成長シナリオを描きやすくなります。投資家にとっても、日本株への長期投資判断において余計な政治リスク要因がひとつ減るわけですから、より積極的な資金配分が可能になるでしょう。

ただし、長期的視点では「関税リスクが再燃し得る」という教訓も得ておく必要があります。今回ブラフだったとしても、将来また政権交代や外交摩擦により保護主義的措置がとられるリスクは常に存在します。したがってポートフォリオ構築においては、過度に特定市場や特定セクターに集中せず分散を図ることが大切です。例えば輸出株と内需株をバランス良く持つ、あるいは海外売上比率の高い企業と国内完結型ビジネスの企業を織り交ぜるなど、リスク分散した長期ポートフォリオが推奨されます。

長期投資家(未投資・既投資を問わず)へのアドバイスとしては、引き続き日本株の基本的な魅力に注目することです。目先の関税騒動は収まっても、日本市場には高齢化や財政問題など構造課題が残りますが、一方で技術革新やアジア成長の果実を享受できる企業も多く存在します。関税というノイズに惑わされ過ぎず、業績が堅調で国際競争力の高い企業への長期投資を続けることが、結果的に大きなリターンをもたらす可能性があります。今回のブラフ騒動は、「政治リスクも織り込んだ上で腰を据えること」の大切さを再認識させる出来事とも言えるでしょう。

シナリオ3:日米交渉で関税導入が回避された場合 –「軟着陸」のケース

● シナリオ概要・市場への影響:
最後に、日米両政府の交渉によって土壇場で関税が回避されるシナリオを考えます。この場合、トランプ政権(あるいは次期政権)が日本側から何らかの譲歩を引き出し、関税発動という最悪事態は避けられることになります。報道によれば、米側は日本に対し農産品(米や牛肉等)の輸入拡大や貿易黒字削減を求めており、日本側は代わりに米国が課している自動車関税(25%)の撤廃を主張している状況です。もし双方が歩み寄り、例えば日本が一定の米国産輸入拡大策を受け入れる代わりに米国が対日追加関税を撤回するといった合意に至れば、ひとまず紛争は沈静化に向かうでしょう。

市場にとってこのシナリオは「ブラフだった場合」に近いポジティブな展開ですが、若干の違いがあります。それは、日本側が引き換えに受け入れる措置による影響です。例えば日本が米国産農産物の輸入枠を拡大すれば、国内の農業分野(コメ農家など)には打撃となり得ます。ただ、農業分野は株式市場では大企業が少ないため、株価全体への波及は限定的でしょう。また過去の事例では、2019年の日米貿易協定において日本が米国産農産品の関税引き下げに合意し、米国は自動車関税引き上げを見送った経緯があります。今回もそれに近い「小幅な譲歩で大きな対立回避」という決着になれば、日本株にとっては間違いなく安堵材料となります。

関税が回避されれば、輸出企業の業績見通しは当初の想定通り維持されるため、株価の下支え要因となります。むしろ交渉難航が懸念され株価が抑えられていた反動で、合意成立の報に株価は急反発する可能性も高いでしょう。特に、関税懸念で売られていた自動車や機械、電子部品株などには買い戻しが集中する展開が予想されます。一方で、日本が譲歩した分野(例えば一部サービス市場の開放など)があれば、その業界では一時的に失望売りが出る可能性もゼロではありません。しかし、国内需要中心のセクター(電力・ガス、通信、食品、小売など)は基本的に今回の交渉対象外であり、良好な内需環境が続く限り安定した業績を維持すると考えられます。総じてこのシナリオは、日本株全体にプラス材料が大きく、マイナス材料は限定的といえるでしょう。

● 短期の戦略:
交渉による回避シナリオが現実味を帯びてきたら、短期的には素早い対応が求められます。既に関税懸念で下落した局面では、リバウンド狙いの買いを速やかに実行したいところです。例えば「交渉で大筋合意に至った」との報道が出れば、翌日の市場はギャップアップ(窓を開けて株価急騰)する可能性があります。その前に仕込んでおくためには、情報感度を高め迅速に発注できる準備が必要です。自動車・機械などの輸出株を中心に、直近売られていた銘柄の買い戻しや、株価指数先物への買いエントリーも一策です。もっとも交渉が土壇場でもつれるリスクも残るため、公式発表までは油断禁物です。合意期待だけで先走りし過ぎず、ニュースの確度を見極めつつ段階的にポジションを取るのが安全です。

新規の投資家にとっても、交渉妥結前夜は参入の好機となり得ます。不安要因で押し下げられていた優良株を、交渉成立を見越して先回り買いする戦略です。ただし初めて日本株に入る方は、市場のボラティリティが高い時期でもあるため無理は禁物です。少額から投じてみて、市場の値動きやニュースの影響を体感しつつポジションを増減させるとよいでしょう。

● 中期の戦略:
交渉がまとまり関税リスクが払拭された後、中期的には日本株市場の先行きに対する不透明感が大きく薄れます。これは海外投資家にとって「日本株買い再開」のシグナルとなり得ます。近時の日経平均の上昇は海外マネーの流入によるところも大きかったため、貿易問題が一段落すれば改めて海外資金が日本市場に向かうことが期待できます。その際、彼らが好むのはやはり流動性が高くグローバル展開する大型株です。トヨタやソニー、ファナックなど日本を代表する輸出株が再評価される可能性があります。従って、中期的にはこれら大型株中心にポートフォリオを再強化する戦略が有効かもしれません。

一方で、内需系の銘柄も引き続き重要です。関税問題が解決しても、もし円高が進行していた場合には日銀の金融緩和策や政府の景気刺激策が取られる余地があります。そうした政策は銀行や不動産、建設といった国内景気敏感株にも追い風です。またインバウンド需要(訪日観光)などのテーマも中期では再び注目されるでしょう。従って、輸出株と内需株のバランスを取りつつ、中期的なテーマ性にも乗る形で投資配分を見直すことが望ましいです。交渉合意による安心感から、日本株全般に買いが波及する公算が高いため、業種を広く分散しつつ有望と思われるところに資金を振り向けていく中期戦略が考えられます。

既に日本株を保有している投資家は、中期的には一度立て直した防御姿勢をノーマル状態に戻すことになるでしょう。関税懸念中に避難的にシフトしていた内需ディフェンシブ中心の構成を、再び攻めの姿勢に切り替える時期です。具体的には、減らしていた輸出株やグロース株の比率を平時並みに戻す、余剰資金があれば新たな有望株を追加するなどです。ただし、交渉過程で日本が受け入れた合意内容によっては影響を受ける業種もあり得ます(例:米国製品との競合が激化する分野)。合意内容の詳細を注視し、マイナス影響が懸念される持ち株があれば必要に応じて組み替える配慮も必要です。

● 長期の戦略:
関税問題が協議によって円満に解決したならば、長期的には日米関係の安定が日本経済にプラスに働くでしょう。貿易摩擦という不安材料が後退することで、企業は長期計画を立てやすくなり、投資家も安心して日本企業の成長に賭けることができます。長期視点では、日本の産業構造にも良い変化が期待できます。例えば、米国が要求する農産物輸入拡大は日本の農業改革を促す契機になるかもしれませんし、日本企業が米市場以外への展開を強化することで輸出先の多角化が進む可能性もあります。こうした変化は一朝一夕には現れませんが、5年10年のスパンで見れば日本企業の体質強化につながり、結果的に株式価値の向上をもたらすかもしれません。

長期投資戦略としては、引き続き日本企業の成長ストーリーに沿った投資を続けるだけです。関税リスク回避後は、例えば自動車メーカーであれば電気自動車化やソフトウェア領域への展開といった本業の課題に集中できるでしょうし、電機・ハイテク企業は半導体やAIといった分野で世界と競争していくことになります。投資家としては、そうした各業界の長期トレンドを見極め、勝者となる企業にじっくり資金を預けるスタンスが報われるはずです。まだ日本株に投資していない方でも、長期的に見れば日本には独自の強みを持つ企業が多数あります(例えば自動車、精密機械、化学、素材、サービス業など各分野の世界トップクラス企業)。関税問題が片付いた後であれば、そうした企業に安心して長期投資を開始できる好機と言えます。

既に投資している方も、今回の件で改めて感じたポートフォリオの耐性を点検しましょう。仮に再度予期せぬ外部ショックが襲っても、慌てず対処できる資産配分になっているか、余力資金や分散が効いているかを確認します。長期投資においては、「想定外」を織り込んだうえで、時間を味方につけるのが鉄則です。日米交渉妥結で当面の不安は解消されますが、将来への備えを怠らず、広い視野で日本株の成長ポテンシャルを信じて持ち続けることが肝要です。

おわりに:柔軟かつ腰を据えた投資姿勢を
トランプ前大統領の突然の高関税示唆発言は、日本の株式投資家にとって大きな試練となりました。幸い、日本企業の多くは財務体質が強化されており、一時的な困難にも耐え得る体力を蓄えています。また日本市場全体も、内需と外需の両輪がバランス良く経済を支えているため、特定分野の不振を他が補う底力があります。したがって、目先のショックに過度に振り回されず、シナリオごとに適切な戦略を取れば長期的な成長果実を享受できるでしょう。

最後に強調したいのは、リスク管理と分散投資の重要性です。今回のような予測困難な政治リスクは今後も起こり得ます。その度に右往左往しないためには、普段から複数のシナリオを念頭に置き、最悪の場合でも致命傷とならない資金配分を心がけることが大切です。短期的には柔軟に立ち回りつつ、中長期的には日本企業の競争力と経済の底力を信じて腰を据える――そんなバランス感覚を持った投資行動が求められます。

日本株投資は決して楽な道のりではありませんが、ピンチはチャンスの裏返しでもあります。関税問題というピンチを乗り越えた先には、適切な戦略を取った投資家にきっと相応のリターンがもたらされることでしょう。今後も国内外の情勢に目配りしつつ、健全なリスク管理の下で日本株と向き合っていきたいものです。