地方証券取引所の概要(札証・名証・福証)

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日本には東京証券取引所(東証)以外に、札幌証券取引所名古屋証券取引所福岡証券取引所という3つの地方証券取引所があります。これらは地域の企業を中心に上場を受け入れる市場で、東証に次ぐ上場会社数を抱えています。例えば2025年時点で、名古屋証券取引所には301社(東証と重複上場を含む)の銘柄が上場しており、札幌証取には62社(うち単独上場18社)、福岡証取には115社(うち本則87・Q-Board21・PRO7)が上場しています。

これら地方市場は、東証に比べ上場基準が緩和されている点が特徴です。例えば、名古屋証取では東証に求められる流通株式時価総額基準がなく(これが名証の最大の特徴)、札幌証取の新興市場「アンビシャス」では上場時の時価総額基準を課していません。福岡証取も本則市場や新興市場(Q-Board)で東証より規模要件を低く設定し、特に九州地域の企業が上場しやすいよう設計されています。地方市場は地域経済への貢献を重視し、地方企業の資金調達や成長支援が役割とされています。

地方市場銘柄に投資するメリット

地方市場銘柄は一般に小型・地元密着型の企業が多く、情報が東証銘柄ほど行き渡っていないため、情報非対称性というメリットがあります。メディアやアナリストの注目が薄いため、割安に放置されている成長企業を見つけるチャンスがあります。実際に証券評論家らは「地方上場株は注目を浴びにくいため、割安な株や配当利回りの高い株が多い」と指摘し、東証への市場変更が実現すると株価が大化けする可能性を指摘しています。

また地方市場銘柄は地元産業に特化するケースが多いことも特徴です。たとえば札幌証取には北海道の農林水産業や観光関連企業、バイオ・食品系ベンチャーが目立ち、名古屋証取では自動車・機械・素材など中部圏の製造業や都市開発関連企業が見られます。福岡証取は九州地方の商社、IT・バイオ・物流など多様な産業が上場しており、地域経済の発展とともに成長余地があります。こうした地域特化型銘柄は業績が地域景気に左右されるリスクもありますが、逆にその分市場全体が注目しにくいので、地域経済の回復・拡大局面で大きく伸びる可能性があります。

小型・未発掘株投資の観点でも地方市場は魅力です。東証より1株あたりの時価総額が小さく個人投資家主体の銘柄が多いため、成長率が高い企業でも株価に十分織り込まれていないことがあります。加えて、社数が少ないことで制度改廃やIRイベントによる株価変動が大きくなりやすく、株価のボラティリティが比較的高い点もチャンスと言えます。一方で流動性リスクは伴います(売買高が少なく、スプレッドが広がりやすい)が、リスク管理を行いつつ割安株を探せば、高いリターンが期待できます。

地方市場から東証市場へのステップアップ事例

地方銘柄の大きな投資機会は、東証市場への市場変更(重複上場)です。地方市場から東証に移行・重複上場することで知名度や資金流入が一気に増え、株価が大きく上昇する銘柄が多く見られます。過去10年ほどで地方→東証市場変更の代表例として挙げられるのが、札幌証取上場の健康食品通販企業・北の達人コーポレーション(証券コード2930)です。同社は2012年5月に札証アンビシャス市場にIPO、2013年3月に札証本則へ市場変更した後、2014年11月に東京証券取引所市場第二部へ重複上場しました。上場承認は2014年10月に発表され、同年11月21日付で東証2部に上場しました。

この市場変更発表前後の株価動向を見ると、発表前は1株200~300円台の水準だった株価が、市場変更発表後は急上昇し、翌年2015年6月には805円(年間高値)をつけています。実際、2015年前半の株価レンジは安値372.5円(2月)から高値805円(6月)となっており、発表から1年弱で株価はほぼ2倍以上に跳ね上がりました。もし市場変更発表時点からその後1年間保有していれば、大きな利益を得られた可能性があります(実際には分割等の要因もありますが、株価上昇幅は約2倍)。出来高も市場変更後に急増しており、情報開示と投資家関心の高まりが顕著です。

同様に名証・福証から東証へステップアップした銘柄例もあります。例えば福岡証取Q-Board上場後に東証マザーズ(現グロース)やスタンダードに上場した例が複数報告されており、福証の資料によれば歴代Q-Board上場15社のうち6社が東証マザーズに、2社が東証2部にステップアップしています。これらの株も市場変更発表時に大きくリターンを生んだケースがあります。名古屋でも「名証ネクスト(旧JASDAQ)」に上場後、東証移行を果たした企業が増えています(代表例:ゴルフ用品のゴルフ・ドゥは名証セントレックスから東証1部へ上場)。いずれも地方上場→東証上場は投資家にとって強烈なイベントであり、株価と需給が変化する好機です。

地方銘柄投資の戦略

地方市場銘柄を投資対象とする場合、「情報不足を突く」ことが基本戦略になります。具体的には、地方企業の決算やIR資料を自ら調べ、地元紙など地方メディアの情報も拾いながら、割安と思われる銘柄を探します。先述したように、地方銘柄は東証銘柄ほどアナリストやネット掲示板の情報が集中しないため、自ら情報の非対称性を埋める努力が重要です。例えば道内企業であれば北海度新聞、東海地域なら中日新聞、九州なら西日本新聞といった地方紙の経済面は、地元企業の新製品や業績動向、官公庁支援情報などを掴む手がかりになります。

また、イベントドリブン投資として市場変更タイミングに注目する戦略も有効です。地方市場で新興企業が急成長し始めた場合、いずれ東証移行を目指す可能性があります。上場審査や取締役会決議で「東証移行」を発表する企業があれば、その時点で買いのチャンスと言えます。先ほどの北の達人の例では、2014年10月の東証承認発表直後に株価が急騰しています。ほかにも、上場承認の臨時開示はIRニュースで公表されるので、証券取引所の開示情報やプレスリリースをこまめにチェックするのが重要です。市場変更が公式に決まった後、市場への上場日までに株価が上向く傾向があるため、承認発表から上場日までの期間を狙うのが一つの戦略です。

需給面の変化も注視します。地方市場銘柄は信用取引の売買高も低いことが多く、空売り残高が少なければ「踏み上げ」要因にもなり得ます。市場変更発表に伴って新規買いが増え、空売りが返済されて株価が急騰することがあります。逆に流動性が低いため、発表前から大口の先回り買いが入りにくく、サプライズが残りやすいとも言えます。適度に出来高がついてこその材料ですので、安易な寄り付きを狙うより、発表直後の反応とその後の買い安心感(出来高増加)を確認してから乗る戦術もあります。

なお、リスク管理は念入りに行います。地方小型株は株価変動が大きく倒産・業績悪化の可能性もありますので、業績予想や株主動向は細かくチェックする必要があります。ただし冒頭の観点で強調した通り、未発掘の成長企業を見つければ大きなリターンが期待できるのが地方市場投資の醍醐味です。東証銘柄を手掛けてきた投資家も、地方市場ならではの成長余地市場変更というきっかけを武器に、新たな収益機会を狙う価値があります。

まとめ

札幌・名古屋・福岡の地方証券取引所は、それぞれ北海道・中部・九州の地域経済を支える場であり、東証と比べて上場基準が緩やかな分、成長企業の数自体は少ないながらも潜在力の高い銘柄が多く上場しています。情報非対称性が大きいものの、だからこそ鋭い目利きによって割安株を発掘でき、「東証上場」などの企業ステップアップイベントでは爆発的なリターンも見込めます。実際、北の達人コーポレーションのように札証銘柄が東証に移行して株価が急伸した事例もあります。個人投資家にとって、地方市場銘柄はスローガン「隠れ10倍株」の可能性を秘めています。以上のように、地方市場上場企業には流動性リスクが付きまとう一方で、市場変更イベントや地域特化型成長など独自のメリットもあります。地域経済の情報を取り込みつつ、市場変更のタイミングを逃さないことで、戦略的に狙う投資先として十分に有望と言えるでしょう。