日本の海底レアアース資源:現状と将来性・関連企業と投資ポイント

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はじめに

日本近海の海底には、レアアース(希土類)資源が大量に眠っていることが明らかになっています。特に東京の南東約1,800kmに位置する南鳥島周辺の深海底には、世界需要の数百年分に相当する莫大なレアアースが含まれた泥(レアアース泥)が分布していることが確認されました。レアアースはハイブリッド車や電気自動車のモーター用磁石、電子部品、蓄電池、触媒など先端産業に不可欠な金属元素ですが、その供給の大部分を中国に依存しているため、安定調達が日本の課題となっています。本記事では、日本の海底レアアース資源の現状と将来性について整理し、関連する国内企業を分野ごとに紹介するとともに、個人投資家の視点から注目すべきポイントを考察します。

海底レアアース資源の現状:南鳥島沖に眠る巨大資源

南鳥島周辺の深海(約水深5,000~6,000m)で高濃度のレアアースを含む泥が堆積していることは、2010年頃から東京大学加藤泰浩教授のチームなどによって報告されてきました。2018年には早稲田大学・東京大学・JAMSTEC(海洋研究開発機構)などの共同研究で、南鳥島EEZ(排他的経済水域)南部の有望海域(約2,500平方キロメートル)の詳細な調査が行われ、その結果世界需要の数百年分にあたる1,600万トン超のレアアース資源が確認されています。これは中国の陸上鉱床を遥かに上回る埋蔵量で、日本にとって潜在的に非常に重要な自前資源です。

南鳥島沖のレアアース泥は海底面直下の堆積物として広範囲に存在します。この泥には17種類の希土類元素(ネオジム、ジスプロシウム、イットリウム等)が含まれ、特に電気自動車のモーターに不可欠なネオジムや、磁石の耐熱性向上に使われるジスプロシウムなどが豊富です。さらに南鳥島のレアアース泥には放射性物質が含まれないことが分かっており、ウランやトリウムを含む陸上鉱山のレアアースに比べて環境負荷の低い「クリーンな資源」である点も注目されています。

現在、この海底レアアース泥を商業的に採取・利用するための技術開発が政府主導で進められています。日本政府は国家プロジェクトとして「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 革新的深海資源調査技術」を2018年度から推進し、JAMSTECを中心に産学官連携で調査・採掘技術の研究開発を行っています。具体的には、水深6,000mという前例のない深さから海底泥を効率よく掘削・吸引(揚泥)する技術や、深海用無人探査機(AUV)による広域調査手法の開発、環境影響モニタリング手法の確立など、多方面の技術課題に取り組んでいます。

技術開発は着実に成果を上げつつあります。2022年10月、JAMSTECは試作した採鉱装置を用いて、水深2,470mの海底から泥を吸い上げる実海域試験に世界で初めて成功しました。この採鉱システムは南鳥島沖6,000mでの稼働を想定したもので、泥に海水を注入してスラリー状にし、二重管を通して海上までポンプで揚げるという「閉鎖系二重管揚泥方式」を採用しています。採取対象の泥は装置内部だけで攪拌・吸引されるため、泥が海中に撒き散らされにくく海底環境への影響を低く抑えられることが期待されています。また、この試験では環境モニタリング用の小型探査機「江戸っ子1号」などを投入し、採鉱中の海水や堆積物拡散を観測する手法も実証されました。

肝心の南鳥島沖本番での採掘については、まず2026年1月に深海探査船「ちきゅう」を用いた試験掘削を開始し、海底下5,500m付近のレアアース泥を回収する計画が報じられています。もし6,000m級での採泥・揚泥が成功すれば世界初の快挙となり、本格的な商業化へ大きく前進します。政府の海洋政策では「2028年以降に南鳥島沖でレアアース泥の採取を実現する」ことが目標に掲げられており、数年内に技術実証→環境影響評価→実用化へのロードマップが描かれています。もっとも、現状では高粘度の泥を6,000mもの深海から大量に汲み上げる技術が未確立であること、レアアースが濃集した層の正確な分布や資源量も未解明な部分が残ること、さらには開発時に海洋環境へどの程度影響が及ぶか不透明であることなど、課題も多く指摘されています。これらの課題解決に向け、産学官のチームが引き続き調査研究を行っている段階です。

海底レアアース開発の将来性:脱中国依存と環境対応

南鳥島の海底レアアース資源は、日本の資源安全保障の切り札になり得るとして大きな期待が寄せられています。日本は現在、レアアースの需要量(年間約3万トン)の大半を中国からの輸入に頼っています。しかし中国政府は度々レアアース輸出規制や技術輸出規制を戦略的に行っており、将来的な供給不安や価格高騰リスクが存在します。実際、2023年には中国がハイテク分野で重要なレアアース磁石の技術輸出規制に踏み切り、国際的に大きな話題となりました。こうした中、自国のEEZ内で莫大なレアアース資源を開発できれば、中国依存からの脱却につながり、国内産業にとって安定供給源を確保できる意義は計り知れません。

将来的な商業化の見通しですが、政府目標の「2028年以降採取開始」が実現すれば、その後数年で限定的な試験的生産を経て、2030年代に本格生産へ移行する可能性があります。ただし、深海採掘には膨大なコストがかかるため、採算性の確保も重要です。南鳥島のレアアース泥は濃度自体は数千ppm(0.1~0.2%程度)と鉱石としては必ずしも高くありませんが、研究チームは粒径選別によって泥中のレアアース濃度を最大2.6倍に高める手法を開発しています。この手法で不要な泥を減らせば、揚泥量を削減して採掘・輸送コストを抑えられる見通しです。実験では選別後の泥は中国の陸上鉱床鉱石の20倍もの高品位になったと報告されており、資源の有効活用技術として期待されています。

環境規制と課題については、深海生態系への影響を最小限に抑えることが大前提となります。国際的にも深海採鉱に対する環境への懸念は強く、国連の国際海底機構(ISA)などで規制が議論されています。南鳥島は日本のEEZ内ですので国内法令の枠内で開発可能ですが、日本政府も独自に環境影響評価ガイドラインを策定しつつあります。前述の通り、採鉱装置は閉鎖型で泥の飛散を防ぐ設計になっており、試験段階から水質や堆積物拡散のモニタリングを実施して科学的データに基づく環境評価を進めています。もっとも、長期的・大規模な採掘が海洋環境に与える影響(例えば深海底に生息する微生物群集への影響など)は未知数です。このため、商業化にあたっては環境面での国際的な理解を得る努力と、必要に応じた規制遵守が不可欠でしょう。

総じて、海底レアアース開発は技術面・経済面・環境面の課題をクリアする必要がありますが、それでも挑戦する価値のある国家プロジェクトと言えます。成功すれば日本がレアアースの純輸入国から将来的には「潜在的輸出国」に転じる可能性もあり、EVや再生可能エネルギー分野の発展を足元で支える戦略資源基盤を築けるからです。

では、この海底レアアースに関連してどのような国内企業が関与しているか、分野ごとに見てみましょう。

レアアース採掘・探査技術に関わる国内企業

海底レアアース泥の探査・採掘には、石油ガス開発などで培われた技術や海洋工学の知見が活かされています。その中核を担う企業・団体を紹介します。

  • JAMSTEC(海洋研究開発機構) – 国の深海探査研究機関。SIPプロジェクトの主導役で、探査船「ちきゅう」の運用や採鉱システム開発・試験を実施。民間企業や大学とコンソーシアムを組み技術開発を進める。※出資対象ではないが政府の取組みとして重要。
  • JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構) – 資源開発の独立行政法人。南鳥島周辺の資源量調査や技術支援を担当し、民間企業への資金支援も行う。現在、高粘性の泥を深海から揚げる基礎研究に取り組んでおり、レアアース泥の分布調査や採掘技術・環境影響評価に関する幅広い支援を実施している。
  • 石油資源開発(JAPEX、1662) – 石油・天然ガスの掘削で実績を持つ資源開発企業。熱水鉱床やレアアース泥の探査技術がSIPに採択されており、深海底資源の探鉱ノウハウを提供しています。自社の主力事業は石油ガス開発で安定収益がありますが、将来を見据え海洋資源分野にも参画しています。
  • 東亜建設工業(1885) – 海洋土木大手。南鳥島EEZのレアアース資源開発に資する無人探査ロボットや採泥技術の開発に取り組んでおり、政府SIPにも参画しています。2023年には深海用遠隔操作ロボット「CRAWLER」を共同開発したとされ、海底鉱物資源調査への技術応用が期待されています。国や大学との共同研究が多く、技術力に定評があります。
  • 東洋エンジニアリング(6330) – プラント建設大手。培ってきた資源開発・海中(サブシー)技術を活かし、水深6,000mからレアアース泥を回収するシステム開発に中心的役割を果たしています。具体的には高粘度で流動しにくい泥をスラリー化しポンプで汲み上げる採鉱・揚泥装置の基本設計・製作を担当し、2022年度の深海試験でその装置による採泥・揚泥に成功しました。政府案件への関与が深く、技術力の高さから関連銘柄の本命格とも目されています。
  • 三井海洋開発(MODEC、6269) – 浮体式海洋プラントの世界的大手。石油・ガス向けFPSO(海上生産・貯蔵・積出設備)で培った洋上生産システムの知見から、レアアース泥開発推進コンソーシアムに参画しています。今後、南鳥島沖で採掘が本格化すれば、同社の海洋プラットフォーム設計技術が活用される可能性があります。実際に浮体式の海洋生産設備分野では国内唯一の専門企業であり、その技術力ゆえに海底資源関連の有力株として注目されています。
  • 鉱研工業(6297) – 地質ボーリング機器の中堅メーカー。陸上・海上向けの掘削機を手掛け、深海ボーリングマシンも開発しています。規模は小さいながら、ニッチ分野で国内トップクラスの技術を持ち、将来の海底掘削ニーズ増大に伴う成長が期待されます。
  • 川崎重工業(7012) – 重工メーカー大手。JAMSTECから深海無人探査機(AUV)の長時間運用技術や海底ステーション(ターミナル)の開発を受注した実績があり、深海ロボティクス技術で貢献しています。潜水調査船やロボット開発の歴史も長く、官公庁案件に強い企業です。
  • 三菱重工業(7011) – 重工業界の雄で、深海探査船「ちきゅう」そのものの建造にも関与。特殊用途船舶の建造技術に優れ、将来的に商用採掘船や揚泥ポンプ設備の設計・製造で活躍が期待されます。また同社傘下のエンジニアリング部門はメタンハイドレートなど他の海底資源開発プロジェクトにも参画実績があります。

以上が探査・採掘技術の主要プレーヤーです。大手資源・重工企業から専門技術を持つ中堅まで、多様な企業が名を連ねており、国のプロジェクトを支えるオールジャパン体制と言えます。特に東洋エンジニアリングや東亜建設工業などはいずれ具体的な受注や装置納入が進めば業績にも寄与する可能性があります。

レアアース分離・精製に関わる企業(素材・化学メーカー)

海底から採取した泥からレアアース元素を取り出し、産業に使える形(酸化物や金属)に精製する工程も重要です。日本にはレアアースの分離・合金化技術を持つメーカーが存在し、既に一部は海外原料を使って事業を展開しています。

  • 信越化学工業(4063) – 世界的な化学メーカー。エレクトロニクス材料事業の一環で高性能希土類磁石(ネオジム磁石)を製造しており、レアアースの合金化・粉末化技術に強みがあります。国内有数の生産設備を持ち、大量のレアアースを扱う体制が整っています。業績も安定して高収益を維持しており、将来国内産レアアースの供給が実現した場合、その恩恵を直接受ける企業の一つでしょう。
  • レゾナック・ホールディングス(4004) – 旧・昭和電工グループ。希土類磁石合金や電池材料など電子材料分野でレアアースを扱っています。特にハードディスク用のネオジム磁石製造で実績があり、ベトナムなど海外から原料調達して精製を行った経験もあります。社名変更・事業再編を経ていますが、レアアース関連の国内素材メーカーとして押さえておきたい銘柄です。
  • 大同特殊鋼(5471) – 特殊鋼大手。トヨタ系で、Nd-Fe-B系の高性能磁石材料の開発・製造も手掛けています(例えば重希土類を低減した自動車モーター用磁石などを開発)。鉄鋼メーカーながら磁性材料で世界トップクラスのシェアを持つ分野があり、素材加工技術に優れる企業です。レアアースそのものの権益は持ちませんが、新素材創製力からレアアース代替や効率利用に貢献しています。
  • アルコニックス(3036) – 非鉄金属系専門商社。電子材料部門でレアメタル・レアアースを取り扱っており、国内外からのレアアース原料調達や精製メーカーへの供給を担います。規模は大きくないものの、高機能材料分野で存在感があり、レアアース価格動向にも敏感に反応する銘柄です。
  • 豊田通商(8015) – トヨタグループの商社。ハイブリッド車向けモーター用磁石の安定供給確保のため、2010年代からインドやアフリカのレアアースプロジェクトに参画してきました。国内分離精製メーカーとの橋渡し役として、将来南鳥島産レアアースの流通でも重要な役割を果たす可能性があります。

レアアース資源リサイクルに関わる企業(都市鉱山)

使用済み製品からレアアースを回収するリサイクル(都市鉱山)分野も、国内で注目されています。レアアースは一度製品(モーター、バッテリー、発光体など)に組み込まれると散逸しがちですが、効率よく回収・再資源化できれば新規採掘量を減らせます。日本企業は古くから電子スクラップや排ガス触媒からレアメタルを回収する技術を培っており、その延長線上でレアアースリサイクルにも取り組んでいます。

  • 三菱マテリアル(5711) – 非鉄金属大手。銅や貴金属精錬で知られますが、使用済み家電やハイブリッド車からレアアース磁石を回収するリサイクル事業を行っています。例えば廃電子機器のモーター部分からネオジム磁石を取り出し、希土類を抽出する技術を確立しています。大手ならではの資金力・処理規模で、都市鉱山開発を推進しています。
  • DOWAホールディングス(5714) – 旧同和鉱業。秋田の小坂製錬所を中心に、廃自動車や研磨剤(光学ガラス研磨に使用された酸化セリウムなど)からレアメタル・レアアースを回収する事業を展開しています。環境リサイクル部門を擁し、年間数万トン規模の産業廃棄物から有価金属を回収する技術力があります。レアアースについても、必要元素(例えばユーロピウム、テルビウム等)のリサイクル供給源となることが期待されています。
  • アサカ理研(5724) – 郡山市に拠点を置く精錬メーカー。金やパラジウムなど貴金属リサイクルが主力ですが、近年蛍光灯の蛍光粉や廃電子部品から希少金属を回収する技術開発で注目を集めました。ネオジム磁石からのレアアース抽出実験にも取り組んでおり、小型ながらニッチ領域で存在感があります。研究開発型の企業で、成功すれば高収益も見込める一方、規模が小さいため業績の振れ幅も大きく投資リスクも高めです。
  • アサヒホールディングス(5857) – 貴金属リサイクル国内最大手。主に金銀やプラチナの回収精錬で知られますが、産業廃棄物処理も手掛けており、レアアース含有廃棄物(ニッケル水素電池など)にも今後ビジネス拡大の余地があります。安定した財務基盤と高配当傾向で個人投資家にも人気の銘柄です。

これらリサイクル企業は、レアアース価格が高騰した局面で脚光を浴びやすいです。特に2010年前後の中国輸出規制時には、アサカ理研などが「国産レアアース確保」のテーマで急騰したことがありました。その後価格沈静化で収益は落ち着きましたが、再びEV需要などで希土類需要が伸びる局面では都市鉱山からの供給が見直される可能性があります。

その他:海外権益・商社などサプライチェーン関連企業

最後に、レアアース資源のサプライチェーン全体で関与する企業にも触れておきます。日本は海底資源開発と並行して、海外の有望鉱山への投資や権益確保も進めています。その窓口となる総合商社なども重要です。

  • 双日(2768) – 中堅商社。2010年に豪州ライナス社(世界有数のレアアース生産企業)にJOGMECと共同出資し、日本向けレアアース供給契約を結んだ実績があります。2023年3月にもライナスへの追加出資(約2億豪ドル)を発表し、日本への重希土類(ジスプロシウム、テルビウムなど)供給拡大に寄与しています。レアアース調達のキープレイヤーであり、中国以外からの調達比率増加に貢献しています。
  • 住友商事(8053) – 大手総合商社。2023年2月にアメリカのMPマテリアルズ社(レアアース生産の新興大手)の日本向け独占販売代理店契約を締結し、北米産レアアースの安定供給ルートを確保しました。資源分野に強い総合商社として、今後国内外のレアアースプロジェクトに関わり続けるでしょう。
  • 丸紅(8002) – 総合商社大手。過去に中央アジアなどのレアアース事業に参画したほか、ハイブリッド車用モーター材料の取引も多く、レアアース価格動向が収益に影響する面があります(資源トレーディング部門経由)。直接的な大きな権益はないものの、素材分野で広範なネットワークを持つためテーマ株として認識されています。
  • ENEOSホールディングス(5020) – エネルギー大手。石油開発子会社を通じ、日本海洋掘削株式会社(JDC)を子会社化するなど海洋資源開発への関与を強めています。JDCの掘削船は深海石油ガス探査用ですが、将来的にレアアース泥の試掘にも応用される可能性があります。グループ全体では金属製錬事業も抱えており、総合的な資源企業として名前が挙がります。

以上、海底レアアースに関連する国内企業を採掘・探査、装置、精製、リサイクル、取引といった観点から概観しました。では、投資家としてこれら企業のどこに注目すべきか、最後にまとめます。

投資家として注目すべきポイントと銘柄

海底レアアース関連のテーマはロマンがあり、日本の将来を担う可能性がありますが、投資対象としては長期視点が必要です。実際の商業化までは数年~十数年のスパンが想定され、近いうちに大きな利益貢献が見込める企業は限られます。そのため、関連銘柄に投資する際は短期的な思惑上昇と中長期的な事業価値向上を分けて考えることが重要です。

まず短期的な株価動向では、ニュースや政策発表に敏感に反応する傾向があります。例えば2023年後半~2024年にかけて、南鳥島での試験掘削計画や中国の輸出規制報道が出ると、東洋エンジニアリングや三井海洋開発といった関連銘柄が急騰する場面がありました。こうしたテーマ性による急騰は一時的なことも多いため、材料出尽くしによる調整リスクにも注意が必要です。一方で、政府予算やプロジェクト進捗が明確になり、関連企業に具体的な受注や収益寄与が発生し始めれば、中長期での株価押上げ要因となり得ます。

注目銘柄の例を挙げると、技術的なキープレイヤーである東洋エンジニアリング(6330)は、レアアース泥揚収システムの実績を持ち政府との関係も深いため、中核的存在です。同社はプラント事業全般では業績変動もありますが、近年エネルギー転換関連(CO2資源化プラント等)でも成果を出し始めており、レアアース開発が追い風となればさらなる評価も期待できます。実際、日経報道を受けて思惑買いで株価が急伸する場面も見られました。

三井海洋開発(6269)も本命株として注目されます。同社は世界的なFPSOメーカーであり、南鳥島開発でもその海洋設備ノウハウが不可欠です。既存の主力事業(石油ガス向け)が堅調で財務基盤があるため、レアアース関連はオプション的な価値ですが、政府コンソーシアム参加により先行者メリットを享受できる立場です。株価は原油市況などに左右されますが、海底資源全般のテーマ性で物色される傾向があります。

資源リサイクル分野では、安定成長とテーマ性の両面を持つDOWAホールディングス(5714)に注目できます。貴金属リサイクルで高い実績を持ちつつ、希少金属の回収にも取り組む姿勢から、レアアース価格上昇局面では評価が高まるでしょう。環境ビジネスとして国の支援も得やすく、中長期で堅実な収益を上げています。同様に三菱マテリアル(5711)も非鉄大手として総合力があり、レアアース磁石リサイクルのパイオニアです。これら大手は収益基盤が安定しているため、テーマが不発に終わっても企業価値が大きく損なわれるリスクは低く、比較的安心感があります。

一方、アサカ理研(5724)のような小型株は、まさにレアアース関連の材料次第で大きく跳ねる可能性があります。実際に過去、中国の輸出規制時には株価が数倍に急騰した経緯があります。しかしボラティリティも高く業績も不安定なため、投資するならハイリスク・ハイリターンを承知の上で短期勝負になるでしょう。

また、総合商社(双日や住友商事など)は本業の多角性から値動きが穏やかで、中長期で資源安定供給メリットを享受するポジションです。例えば双日はレアアース権益を長年保持しており、中国以外からの調達拡大が利益に寄与しやすい体制です。商社株は配当利回りも高めで腰を据えて保有しやすい点も魅力です。

投資家としては、「夢のあるテーマ」に飛びつくだけでなく、現実に利益を上げられる企業かどうかを見極める視点が大切です。海底レアアース開発は国家プロジェクトゆえに進捗は確実にフォローすべきですが、関連企業の中には本業のごく一部として参加しているだけの所もあります。そのため、具体的に収益インパクトが見込める企業(装置を受注する、権益からオフテイク契約で利益を得る等)かどうかを注視しましょう。

特に今後数年で注目すべき点は、①2026年前後の試験採掘の成否とそれによる受注動向、②政府の支援策拡充(補助金や法整備など)による関連市場の活性化、③中国のレアアース政策動向(輸出管理強化や価格変動)です。これらによって関連銘柄の材料出現タイミングが左右されます。

まとめると、海底レアアース関連は長期的な国家的テーマであり、個人投資家にとっても魅力的なストーリーです。東洋エンジニアリングや三井海洋開発のような技術中核企業、信越化学やDOWAのような素材・リサイクルの実力企業、双日や住友商事のような安定型の供給網企業まで、それぞれキャラクターの異なる銘柄が存在します。自分の投資スタンス(短期の値幅狙いか、中長期の成長期待か)に合わせて、どの企業に注目するか選ぶと良いでしょう。最終的には、日本が資源大国に変貌しうる可能性に注目しつつ、その実現を支える企業群の動向を追っていくことが肝心です。夢のあるテーマだからこそ冷静に、本当に価値を生み出す企業を見極めていきましょう。