日本上場企業におけるビットコイン投資企業のmNAV比較レポート

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仮想通貨市場と企業参入の背景

近年、仮想通貨市場と株式市場の接点が大きく広がっています。特に世界的にビットコイン価格が高騰する中、企業が自社の資産としてビットコインを大量保有する動きが注目されるようになりました。アメリカではマイクロストラテジー(現「ストラテジー」)社が“ビットコイン財務戦略企業”として先陣を切り、数十万BTCに及ぶ莫大な保有量を誇っています。この流れは日本企業にも波及し、日本株市場でも仮想通貨(暗号資産)をバランスシートに計上する上場企業が増えてきました。たとえば2024年以降、日本ではメタプラネット(3350)がビットコイン投資戦略を表明して株価急騰を演じ、国内企業によるビットコイン保有ブームの火付け役となりました。こうした「仮想通貨銘柄」とも呼べる企業は、従来事業と並行してビットコイン投資を進めることで企業価値向上を狙っており、投資家からも大きな関心を集めています。

本稿では、2023~2025年の過去1~2年以内にビットコイン投資を始めた日本の上場企業を抽出し、その最新の株価・発行済株式数・ビットコイン保有量・時価総額を整理します。その上で各社のmNAV (Market Cap to Net Asset Value)、すなわち「時価総額 ÷ 保有ビットコインの時価評価額」を独自計算し、最低3社(可能なら5社以上)のmNAVを比較分析します。mNAVという指標を用いることで、各銘柄の株価がビットコイン資産に対して割安か割高かを評価でき、ビットコイン投資を行う日本株への理解が深まるでしょう。

mNAVの意味と投資指標としての意義

mNAV(Market Cap to Net Asset Value)とは、企業の時価総額をその保有資産の時価評価額で割った比率を指します。本稿では特に、企業が保有するビットコインの時価総額に対する時価総額の比率としてmNAVを算出します。簡単に言えば、企業の株価がビットコイン資産に対して何倍の評価を受けているかを表す指標です。

例えば、ある企業の時価総額が200億円で、保有するビットコインの市場価値が100億円であれば、mNAVは 2.0倍 となります。この値が1.0に近ければ近いほど、株式の評価額が保有ビットコインの評価額に近い(つまり企業が持つビットコイン相当の価値で株価が形成されている)ことを意味します。一方、mNAVが大きければ株価がビットコイン資産以上に高い評価を受けている、言い換えればビットコイン以外の事業価値や将来期待でプレミアムが上乗せされていることを示唆します。投資指標としてmNAVを捉えることで、仮想通貨銘柄の割安株割高株の判断材料にすることができます。特にビットコイン投資を積極展開する企業では、株価とビットコイン価格が強く連動する傾向があり、mNAVはそうした連動性やプレミアムの度合いを定量的に把握する助けとなります。

もっとも、mNAVはあくまで企業が保有するビットコインの時価に基づく指標であり、企業の他の資産・負債や収益力は考慮していません。従って、単純にmNAVが低いから即割安・高いから即割高と判断するのは早計です。極端にmNAVが1.0を下回る場合、企業価値が保有ビットコイン以下と見なされ理論上割安にも思えますが、その背景にはビットコイン価格下落リスクや追加資金調達による株式希薄化リスクなど、市場が織り込む割引要因があるかもしれません。逆にmNAVが高水準の場合も、企業がビットコイン資産を運用して上げる付加価値(例えばマイニング収益や関連事業シナジー)への期待値が含まれている可能性があります。したがって、mNAVは他のファンダメンタルズと合わせて総合的に分析すべき指標ですが、ビットコイン投資企業を評価するうえで有用な視点であることは間違いありません。

仮想通貨投資企業の抽出と概要

それでは、2023年~2025年に新たに仮想通貨(ビットコイン)投資を始めた日本の上場企業を抽出し、その概要を見ていきます。本稿の調査により、2025年8月現在でビットコイン保有を公表している日本企業は少なくとも8社存在することが確認できました。その中から特に代表的と思われる以下の企業を取り上げます:

  • メタプラネット(3350) – Web3関連やIR事業を手掛けていた企業ですが、2024年4月に「アジア版マイクロストラテジー」を目指すと宣言し、大胆なビットコイン長期投資戦略に舵を切りました。第三者割当増資などで調達した資金を次々とBTC購入に充当し、保有量を急拡大させています。同社は2025年6月時点で約8,888BTCを保有し、7月にはさらに大規模な買い増しを実施、8月時点では1万7,595BTCという世界有数の保有量に達しました。ビットコインの含み益が会社価値の中核となり、株価は2024年初の16円から2025年8月には1,000円超へと爆騰しています。日本株市場で「ビットコイン財務戦略」の成功例として真っ先に名前が挙がる企業です。
  • リミックスポイント(3825) – 電力小売や省エネコンサルを本業とする企業で、かつては子会社で暗号資産取引所「BITPoint」を運営していました(同事業は2023年にSBIグループへ譲渡済み)。取引所売却後の2024年から、本格的にビットコインのトレジャリー(企業資産としての保有)戦略を開始しています。同社は2025年7月時点で約1,168BTC(取得総額171億円超)を保有しており、今後「1,000BTC以上の取得を目指す」と公言するなど攻めの姿勢を強めています。実際、2025年7月には新株予約権や社債発行によって総額約315億円もの大型資金調達を発表しており、これをビットコイン追加投資に充てる計画です。元BITPoint社長の田代氏が新CEOに就任し、セキュリティ面や調達ノウハウで強みを発揮しつつ、エネルギー事業とのシナジーも模索している点が特徴です。
  • ANAPホールディングス(3189) – 若者向けファッションブランド「ANAP」を展開するアパレル企業ですが、2025年に入り仮想通貨投資を新規事業の柱に据えました。2025年2月に子会社「ANAPライトニングキャピタル」を設立して段階的にビットコインを購入し、2025年8月12日時点で合計913BTC(約160億円相当)を保有しています。直近では2025年8月7日に約14億円を投じて82.3BTCを追加取得したことを開示しており、積極的な買い増しが続いています。本業の衣料品販売が低迷する中、暗号資産投資で財務体質強化と新収益源の確立を目指す動きで、同社株価も発表以降大きく変動しています。
  • マックハウス(7603) – 全国に衣料品チェーン店を展開する小売企業ですが、2025年に入り大胆な事業転換を打ち出しました。臨時株主総会の承認を経て暗号資産投資事業への参入を決定し、最大17億円をビットコイン取得に充当する方針を表明しました。さらに資金調達の成功を受け、取得予定額を当初計画の17億円から40億円へ大幅増額(+23億円)すると2025年7月28日に発表しており、ビットコイン1000BTC以上の保有を目指す戦略も掲げられています。同社は2025年9月17日からビットコインの定期取得(ドルコスト平均法)を開始する計画で、米国のマイニング事業参入など5つの施策と併せて「ビットコイントレジャリー企業」への転身を図っています。実際に取得開始前から株価は急騰し、2023年には二桁円だった株価が2025年7月には一時600円台を付けるなど乱高下しています(直近は400円前後)。※マックハウスは記事執筆時点でまだビットコイン取得を開始しておらず、以下のmnav計算では計画段階の数値となる点に留意ください。
  • 堀田丸正(8105) – 繊維製品の卸売を営んできた老舗企業ですが、2025年8月に仮想通貨業界で大きな話題となりました。ニューヨーク証券取引所上場の仮想通貨プラットフォーム企業Bakkt Holdings(バックト)が堀田丸正株の約30%を取得し筆頭株主になると発表、同社を起点に多国籍ビットコイン財務戦略を開始する意向が示されたのです。取引完了後にはバックト社幹部がCEOに就任予定で、堀田丸正はビットコインやデジタル資産への財務投資を開始し、社名も「bitcoin.jp」へ変更する計画とされています。現時点で堀田丸正自体はまだビットコインを保有していませんが、海外企業による買収を通じて日本企業がビットコイン投資戦略に「衣替え」するケースとして非常にユニークな存在です。発表直後に同社株価はPTSで+44%高騰するなど市場の期待も大きく、今後の展開次第では国内屈指のビットコイン保有企業が誕生する可能性があります。

以上のほかにも、ネクソン(3659)のように以前から自社資産としてビットコインを保有する例があります(同社は2021年4月に約1,717BTCを取得し現在も保有)。ただしネクソンの場合はゲーム事業が主で追加購入は行っておらず、あくまで余剰資金の一部をビットコインに配分した形です。また、コンヴァノ(6574)やバリュークリエイション(9238)、AIフュージョンキャピタル・グループ(証券コード254A)といった小型企業も2024~2025年に少量のBTC取得を発表しています。これらはいずれも保有量が数十BTC程度と限定的ですが、新規事業参入の材料として株価にインパクトを与えました。今回は代表的な5社(メタプラネット、リミックスポイント、ANAP、マックハウス、堀田丸正)を中心に議論を進めますが、読者の皆様は日本株市場で増えつつあるこうした仮想通貨銘柄全般にアンテナを張っておくと良いでしょう。

各銘柄のmNAV計算結果(BTC保有量、時価総額、mNAV値)

それでは、抽出した企業について実際にmnavを計算し、比較してみます。各社の最新株価や発行済株式数、ビットコイン保有量は2025年8月中旬時点の公開情報に基づきます。なお、ビットコインの円換算レートは1BTC ≈ 1,700万円前後(2025年8月時点)で計算しています。

  • メタプラネット(3350): 株価約1,000円、発行済株式数約6.55億株のため、時価総額はおよそ6,560億円です。同社のビットコイン保有量は約17,595BTC(円換算で約3,095億円)に上ります。したがって、mNAV=6,560億円÷3,095億円≒2.1倍となります。この数値は、株価にはビットコイン保有額の約2倍強の価値が織り込まれていることを意味します。別の言い方をすれば、同社の場合時価総額の約47%がビットコイン保有額に裏付けられている計算です。メタプラネットは本業収益よりビットコイン含み益が企業価値を牽引する状況にあり、投資家は同社株をビットコイン連動株として捉えているといえます。
  • リミックスポイント(3825): 株価約460円、発行済株式数約1.38億株で、時価総額はおよそ644億円です。ビットコイン保有量は1,168BTC(円換算で約205億円相当)と推定されます。mnav=644億円÷205億円≒3.1倍です。つまり、株価には保有BTCの3倍超の価値が織り込まれている形で、時価総額に占めるビットコイン資産の割合は約32%に留まります。メタプラネットよりmnavが高めなのは、リミックスポイントが電力事業など他事業の収益や、今後の追加投資による成長期待を評価されているためと考えられます。実際、同社は315億円の新資金で最大数千BTC規模の追加取得を予定しており、仮に計画通り保有量が増えれば将来的にmNAVが低下(BTC資産割合が上昇)していく可能性があります。
  • ANAPホールディングス(3189): 株価835円、発行済株式数約3,500万株強で、時価総額は約292億円です。保有ビットコインは913BTC(約160億円相当)です。mNAV=292億円÷160億円≒1.8倍となり、メタプラネットとほぼ同水準の低い倍率です。時価総額の約55%がビットコイン評価額に対応する計算で、株価に占めるBTC資産の比重大きさが際立ちます。ANAPの場合、本業のアパレル収益は限定的である一方、暗号資産投資への依存度が高いため、市場も株価をビットコイン準拠で評価していると考えられます。mNAVが2倍弱ということは、現状の株価水準はほぼビットコイン保有額+α程度の価値しか織り込んでおらず、裏を返せば株式市場が同社の既存事業にはさほど高いプレミアムを付与していない状況とも読み取れます。
  • マックハウス(7603): 株価400円前後、発行済株式数約2,259万株(※増資前)で、時価総額は約90億円です。記事執筆時点ではビットコイン未取得のため保有量は0BTCですが、計画中の投資額40億円を全てBTC購入に充当したと仮定すると、約235BTC(40億円÷約0.17億円/BTC)の取得が見込まれます。その場合のBTC評価額は40億円、mNAVは試算上で2.25倍(90億円÷40億円)となります。さらに、目標とする1000BTC(約170億円相当)を将来的に保有できれば、現時点の時価総額との対比ではmNAV≒0.53倍にまで低下する計算です。もちろん実際には今後の資金調達に伴い株式数が増加するため単純比較はできませんが、少なくとも現段階のマックハウス株価にはビットコイン保有による企業価値向上の余地が大きく残されているように見えます。逆に言えば、市場はまだ「マックハウスが計画通りに暗号資産運用を成功させる」ことを完全には織り込んでおらず、実績次第で評価が変動し得るフェーズといえるでしょう。
  • 堀田丸正(8105): 株価380円、発行済株式数約5,964万株で、時価総額は約227億円です。Bakktによる買収発表後に急騰した結果の時価総額ですが、現時点でビットコイン保有量は0BTC(これから財務投資を開始予定)です。従ってmNAVの算出はまだできません。ただし参考までに、仮にBakkt側が調達した約7,500万ドル(約100億円)の一部を堀田丸正でのBTC購入に充て、たとえば50億円分のビットコインを取得したとしましょう。現在の価格で約294BTCに相当し、その場合のBTC評価額50億円に対するmNAVは4.5倍(227億円÷50億円)となります。これは他のビットコイン投資銘柄と比べると高めの水準ですが、同社の場合はビットコイン投資だけでなくバックトとのシナジーやグローバル展開への期待値が株価に含まれていると考えられます。今後実際にどれほどのBTCを取得するか次第でmNAVも大きく変動するでしょう。現状では「仮想通貨企業による買収劇」という材料で先行して株価が動いたケースであり、具体的なビットコイン保有額が判明してから改めて評価される段階にあります。

以上をまとめると、メタプラネットやANAPのmNAVがおおむね2倍前後と低く、リミックスポイントが3倍前後、他の事例ではマックハウス(40億円投資仮定時)も2倍程度、堀田丸正(50億円投資仮定時)は4倍超、そしてネクソンのように本業が大きい企業では80倍超に達します。極端な例としてネクソンはビットコイン保有が時価総額の1%強に過ぎないためmNAV約82倍ですが、これは「ビットコインの価値より本業のゲーム事業価値で株価が動いている」典型でしょう。一方でmNAV 2倍前後の銘柄群は、ビットコインが企業価値に占める比重が高く、株価もビットコイン市場動向に敏感に反応しやすいといえます。

mNAVの高低と株価の割安度・割高度の考察

上記のmNAV分析から、各銘柄の割安度・割高度について考察します。一般的に、mNAVが低いほど割安、高いほど割高に見えますが、前述の通り単純な比較には注意が必要です。ただ株式市場のセンチメントを読む上では、mNAVの高低は投資家がその企業にどの程度のプレミアムを与えているかを端的に示す指標と言えます。

まず、mNAVがおおむね2倍前後(メタプラネットやANAPなど)の企業群は、保有ビットコインの価値と比較して株価に大きな上乗せがない状態です。これは一見すると「ビットコインを保有している割に株価が割安」に映ります。実際、メタプラネットやANAPは事業規模の割に巨額のBTCを抱えており、極論すれば「株式を買えば裏付けとしてほぼ同等額のビットコインが手に入る」ような状況に近づきつつあります。このような銘柄は割安株と評価されやすく、ビットコイン強気派の投資家にとっては魅力的に映るでしょう。例えば、ANAPの時価総額の半分以上が既にBTC評価額で占められている点は、裏を返せば「残り半分の企業価値(ブランドや将来の収益)はほとんど織り込まれていない」ことになります。将来的にアパレル事業や暗号資産運用が奏功すれば、株価上昇余地が大きいとも解釈できます。

一方、mNAVが3倍以上(リミックスポイントやコンヴァノ、AIフュージョン等)の企業は、ビットコイン資産以上に株価が評価されている、すなわちビットコイン以外の事業価値や成長期待が織り込まれている状態です。リミックスポイントの場合、電力・蓄電池関連事業や経営陣の手腕への期待がプレミアムとなって現れ、BTC保有額の約3倍の時価総額が付いています。このプレミアムが正当化されるには、例えば今後のビットコイン追加取得による規模拡大や、エネルギー事業との融合による収益向上などが必要でしょう。逆に言えば、何らかの理由で期待が剥落すれば株価の下振れリスクも孕んでおり、割高株との見方もできます。特にリミックスポイントのように新株予約権発行で潜在株式数が増えるケースでは、株式希薄化によって一時的にmNAVが上昇(割高化)することもあり得ます。この点、同社は市場価格と同程度での増資(ディスカウント無しの条件)により希薄化影響を極力抑えていますが、追加のビットコイン取得が株価上昇に結び付かなければmNAVがさらに跳ね上がるリスクもあります。

興味深いのは、mNAV≒1倍に極めて近づくケースがまだ日本には見当たらないことです。理論上、mNAV=1なら「企業の時価総額=保有ビットコインの時価評価額」であり、投資家はその企業をビットコインの持ち株信託のように評価していることになります。米国のマイクロストラテジー(ストラテジー社)は2022年の弱気相場時にmNAVが1倍台前半まで低下し「株を買えば同額のBTCが手に入る」と揶揄されましたが、2025年現在では価格回復でmNAV1.5~2倍程度に戻っています。日本の先行組であるメタプラネットですらmNAV約2倍で踏みとどまっており、市場が企業価値をビットコイン保有額ピッタリにまで切り下げてはいないことが分かります。これは、投資家が企業自体の将来性や運用巧拙に一定の価値を認めている証左ともいえます。万一、日本企業でmNAV=1割れ(<1.0)となれば、理論上は「保有BTCを売却して解散すれば株主は儲かる」状態ですから、アクティビストが介入する隙も生まれかねません。その意味で、市場はmNAVを1倍より高い水準に保つことで、企業がビットコインを活用して将来利益を生み出す余地を織り込んでいると解釈できます。

以上から、mnavの低い銘柄ほどビットコイン保有額に対して株価が割安に見える一方、そこには「本業の弱さ」「資金調達リスク」「ビットコイン依存度の高さ」などの理由が潜んでいる可能性があります。逆にmNAVの高い銘柄ほど株価が割高に映りますが、それは「他事業の収益力」「将来的な成長投資の成功」「経営陣への信頼」といったプレミアム要因を市場が評価している表れとも受け取れます。投資家として重要なのは、このプレミアムやディスカウントの妥当性を見極めることです。ビットコイン価格が上昇局面では、低mNAV銘柄は相対的に急騰しやすく割安解消に向かう可能性がありますし、逆にビットコイン急落時には高mNAV銘柄ほど失望売りで過剰に売られる恐れがあります。mNAVはそうした株価モメンタムの強さもある程度示唆してくれるため、投資判断の際に注目すべき指標と言えるでしょう。

投資家への示唆

仮想通貨投資を行う日本企業の分析から、いくつか投資家への示唆が浮かび上がります。第一に、これら仮想通貨銘柄(ビットコイン投資銘柄)は株式を通じて間接的にビットコインへ投資する手段となり得ます。特にmNAVが低めの企業は、実質的に「株を買うとほぼ同額のビットコインを保有する企業のオーナーになれる」状態であり、ビットコインそのものを割安に手に入れる代替手段と考えることもできます。ビットコインETFが未整備な日本市場において、株式投資の形でビットコインの値上がり益にレバレッジをかける戦略とも言えるでしょう。したがって、仮にビットコイン強気シナリオを描く投資家であれば、mNAVの低い銘柄を組み入れることで将来の大きなリターンを狙える可能性があります。

しかし第二に留意すべきは、これら銘柄の株価ボラティリティは非常に高いという点です。ビットコイン価格の変動が企業業績に直結するため、株価も日々のBTC相場に敏感に反応します。実際、メタプラネットやリミックスポイントの株価推移を見ると、ビットコイン急落局面でストップ安になるような激しい値動きも発生しています。投資家は「株式を保有することは間接的にビットコインに投資することと同じ」であるリスクを十分認識する必要があります。これらの銘柄へ投資する際は、暗号資産固有のボラティリティや流動性リスク、さらにはハッキング・盗難リスクまで内包している点に注意が必要です(リミックスポイントCEOも「大量のBTC購入企業はセキュリティが何より重要」と警鐘を鳴らしています)。割安株に見えるからといって安易に飛びつくのではなく、自身のリスク許容度と照らし合わせた慎重な判断が求められます。

第三に、企業側の戦略変更や資金調達動向にも目を配る必要があります。多くのビットコイン投資企業は、新株発行やワラント発行で資金を調達し、それを原資にBTC取得を進めています。このスキームは株式の希薄化を伴うため、投資家にとっては1株あたり価値の低下リスクでもあります。しかし、それによって得たビットコインが値上がりすれば企業価値は増大し、結果的に株主にも利益となる可能性があります。例えばマックハウスはディスカウント無しの増資を行い17億円を調達しており、既存株主の価値毀損を最小限にしながら暗号資産投資の原資を確保しました。投資家は、各企業の増資条件や資金用途に注目し、経営陣が株主価値を重視しているかを見極めることが重要です。逆に、仮にビットコイン価格が大幅に上昇して保有資産に含み益が出ても、経営陣がそれを現金化しない(=売却益を株主に還元しない)方針である可能性も高く、含み益をどう扱うかも企業ごとに異なるでしょう。この辺りのスタンス(「ビットコインは売らず長期保有」など)もIR資料や発言から読み取っておくと安心です。

最後に、日本固有の税制や会計処理も投資判断に影響します。日本では企業が保有する暗号資産は期末時価評価して損益計上する会計ルールがあり、含み損が出れば減損処理を強いられます。過去にはそれを嫌ってビットコインを手放した企業例もありました(例:バリュークリエイションは2025年8月に全BTCを売却し約5,200万円の利益計上)。一方で税制面では日米の差異もあり、日本企業がビットコインを長期保有するインセンティブも存在します。具体的には、2024年以降の税制改正で一部の暗号資産は含み益課税の対象外となったほか、NISAを活用すれば個人と同様にキャピタルゲイン非課税枠の恩恵も考えられます。投資家としては、こうした法制度の変化が企業のホールド戦略に与える影響にも目を向け、政策と企業行動の絡みまで視野に入れた分析を心掛けるべきでしょう。

今後の展望

ビットコインを財務資産として組み入れる動きは、日本においてまだ始まったばかりです。2025年8月時点で公表ベースでは8社程度に留まるものの、その内訳を見ると2024年以降に参入した企業が大半を占めており、足元で急速にトレンドが形成されつつあります。今後の展望として、以下のポイントが考えられます。

  1. 参入企業の増加と多様化: ビットコイン市場の成熟や価格上昇が続けば、さらなる企業が追随する可能性があります。特に業績低迷中の中小企業にとって、ビットコイン投資は株価テコ入れや財務改善の起爆剤となり得るため、「第二のメタプラネット」を狙う動きが続くでしょう。実際、ANAPやマックハウスなど業種を問わず様々な企業が名乗りを上げ始めています。今後はIT企業や金融関連のみならず、製造業やサービス業といった分野からの参入も十分考えられます。また海外企業(今回のBakktの例)の関与も出てきたことで、国際的な企業買収を通じたビットコイン保有戦略という新たな形態も広がるかもしれません。
  2. 規制・制度面の整備: 日本政府・当局のスタンスもこの潮流に影響を与えます。もし今後、日本でビットコイン現物ETFが承認されたり、法人の暗号資産会計基準が緩和されたりすれば、企業は自社で直接保有するよりETF購入を選ぶ可能性もあります。しかし現状ではETF不在や税制優遇もあって、企業自らBTCを買う方がメリットが大きい状況が追い風となっています。この状況が大きく変わらない限り、企業のビットコイン保有トレンドは当面加速すると見る向きもあります。一方で、仮想通貨市場特有のボラティリティが金融システムリスクと見做されれば、何らかの制限策が検討される可能性もゼロではありません。例えば銀行など規制業種の企業が膨大な暗号資産ポジションを取れば当局は警戒するでしょう。もっとも現時点では、そのようなケースは想定しにくく、むしろ民間企業のイノベーティブな動きとして歓迎する声の方が大きい印象です。
  3. 株価への織り込み度合い: 先行企業の株価推移を見ると、初期段階では「ビットコイン参入」の材料だけで株価が急騰する傾向がありました。しかし銘柄数が増えるにつれて、投資家も選別眼を持ち始めています。今後は「どのくらい安くBTCを仕込んだか」「どの程度大量に保有できたか」「他の収益源とのシナジーはあるか」といった点で明暗が分かれるでしょう。言い換えれば、単に参入を表明しただけでは一時的な物色に終わり、継続的に企業価値を高めるには運用成績や戦略の独自性が求められるフェーズに移行すると考えられます。mNAVの推移も各社で差が出てくる可能性があります。実際、メタプラネットとリミックスポイントは共に大量のBTCを保有しつつありますが、前者はほぼホールド戦略一本なのに対し、後者はマイニングやエネルギー活用などエコシステム全体への関与を打ち出しています。こうした戦略の違いが長期的にプレミアム(mNAVの差)となって現れるのか、引き続きウォッチが必要です。
  4. ビットコイン市場そのものの影響: 言うまでもなく、根底にあるビットコイン相場の行方が最大の鍵です。2025年現在、ビットコイン価格は過去数年の弱気局面を脱し、再び最高値圏に迫る勢いを見せています。この追い風の中で各社は含み益を抱え、財務的な恩恵を享受しています。しかし将来にまた大幅調整が訪れた場合、これら企業の含み損計上や株価下落は避けられません。その際に投資家がどこまでホールドを続けられるか、企業が戦略を維持できるかが試されるでしょう。極端なシナリオですが、メタプラネットは「2027年までに21万BTC保有を目指す」と宣言しており、もしそれが実現すれば同社は世界最大級のBTC保有企業となります。夢物語のようですが、仮想通貨の世界では数年で情勢が一変することもしばしばです。したがって投資家としては、最悪のケースと最高のケースの両方を念頭に置きつつ、ポートフォリオ管理を行う必要があるでしょう。

総じて、ビットコイン投資企業の台頭は日本の株式市場に新風をもたらしています。これは単なる一時的なテーマ株物色ではなく、企業の資産運用戦略の多様化という構造変化でもあります。今後の展開次第で、投資家にとっては「株式+仮想通貨」というハイブリッドな分析スキルが求められる場面が増えていくかもしれません。

まとめ

ビットコインをはじめとする仮想通貨が「デジタルゴールド」として認知を高める中、日本の上場企業にも仮想通貨投資を財務戦略に組み込む動きが広がりつつあります。本稿では、過去1~2年以内にビットコイン投資を開始した企業を例に取り、その最新株価やビットコイン保有額から独自にmNAVを算出して比較しました。

メタプラネットやリミックスポイント、ANAP、マックハウス、堀田丸正といった企業は、各々の事情や思惑でビットコイン投資に踏み切り、その保有量は千BTC単位から数万BTCに及ぶケースまで様々です。mNAV分析の結果、ビットコイン資産に対する株価の評価倍率は企業ごとに大きく異なり、2倍前後の銘柄から3倍超の銘柄まで存在しました。mnNAVの低い企業は一見割安で魅力的に映る一方、そこには本業収益力の弱さや希薄化リスクなど市場が織り込む要因も潜んでいます。逆にmNAVの高い企業は割高に見えますが、他事業の価値や将来の成長期待というプレミアムの表れとも言えます。投資家として重要なのは、このmNAVという“ものさし”を手掛かりに、各銘柄の本質的な割安・割高を見極めることでしょう。

現状では、ビットコイン投資企業の株価はビットコイン相場と強く連動し、日々ボラティリティの高い値動きを示しています。そのため、これらの銘柄への投資はビットコイン投資に準ずるリスクとリターンを伴う点に留意が必要です。一方で、日本固有の市場環境(ETF不在や税制優遇)もあって、このトレンドは当面継続・拡大すると予想されます。企業がビットコインを大量保有することへの評価は賛否あるものの、それによって休眠資産が活用され企業価値が向上するのであれば投資家にとっても歓迎すべきことです。実際、メタプラネットの劇的な復活劇やANAPのような異業種からの参入は、日本株市場に新たな投資テーマと活力を与えています。

mNAV(時価総額÷BTC時価保有額)という指標は、今後こうした仮想通貨銘柄を評価する上で一つのキーワードになっていくでしょう。この記事で散りばめた「mNAV」「仮想通貨銘柄」「ビットコイン投資」「日本株」「割安株」といったキーワードが示す通り、株式投資と仮想通貨投資の世界は徐々に交わり始めています。投資家は両者の知識を融合させ、自らの投資判断に活かしていくことが求められます。幸い、日本には世界でもユニークなビットコイン財務戦略企業が現れてきました。この動きが一過性のブームに終わるのか、新たな潮流として定着するのか――それはビットコインという資産の行方と、人々の信認にかかっています。いずれにせよ、私たちは今、新しい時代の投資スタイルを目撃しているのかもしれません。そしてその中には、思わぬ掘り出し物の割安株や、大化けする成長株が潜んでいる可能性もあるのです。

以上の分析を参考に、読者の皆様もぜひmNAVという視点から日本の仮想通貨関連銘柄を研究してみてください。ビットコインと日本株の交差点に、これからの投資チャンスが生まれてくることでしょう。