篠崎屋(2926)の投資分析レポート – 株主還元策と成長戦略に注目

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篠崎屋の企業概要と独自ビジネスモデル

篠崎屋(コード: 2926)は、首都圏を中心に「三代目茂蔵(さんだいめしげぞう)」ブランドで豆腐や豆乳など大豆加工食品の企画・販売を手掛ける企業です。一般的な豆腐メーカーがスーパー向け卸売を主体とするのに対し、篠崎屋は直営店とフランチャイズ加盟店による小売販売に特化しており、関東圏に数多くの店舗を展開しています。1987年創業、2003年に株式上場を果たし、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。自社ブランド「三代目茂蔵」の店舗では、木綿・絹ごし豆腐はもちろん、豆乳スイーツやおから製ドーナツなど独自の商品開発にも力を入れており、従来の「豆腐=安価な副食」というイメージを覆す多彩なラインナップを揃えています。これらのオリジナル商品群は他社との差別化ポイントとなっており、伝統食品である豆腐を新しい形で提案するビジネスモデルが篠崎屋のユニークさと言えます。

株主還元策:配当政策と自社株買い

篠崎屋の株主還元策について見ると、配当政策に関しては「業績および経営状況に応じて成果を配当として実施しつつ、将来の事業展開に備え財務体質の強化にも努める」という基本方針を掲げています。しかし近年の同社は業績低迷もあり無配傾向が続いています。実際、2019年9月期に1株あたり0.50円のわずかな配当を実施したのを最後に、2020年以降は配当を見送っており、2024年9月期まで5期連続で無配となっています。2025年9月期についても、中間配当は0円と発表されており、業績回復を優先する姿勢がうかがえます。一方、自社株買いによる株主還元も行っており、過去には業績好転期に自己株式取得を実施した実績があります。直近では2025年8月に自己株式の消却を決議しており、27万8,820株(発行済株式数の約1.93%)を消却することで発行株式数を減少させました。この自己株式消却により発行株式総数は約1,415万株となり、株主価値の向上につながる施策となっています。篠崎屋は株主優待制度こそ設けていないものの、今後の業績改善次第では配当復配やさらなる自社株買いを検討すると見られ、株主還元への意欲を示しています。

今後の成長戦略:新規事業・店舗展開・海外展開

篠崎屋は上場維持基準の適合計画の中で、「業績回復」を最重要課題と位置づけ各種施策を推進しています。その一つが新商品の開発強化です。具体的には「魅力ある商品づくりが不可欠」として、最低でも毎月3アイテム以上の新商品導入を掲げ、付加価値の高い商品の継続投入によって売上向上を図っています。実際、2024年9月期には高価格帯の米飯商品などを投入し、これが顧客単価と利益率の向上に貢献したと評価されています。また、過度な値上げによる顧客離れを防ぐため価格改定は慎重に行い、日々定価販売率をチェックしながら利益率改善に取り組んだ結果、黒字転換に成功した年度もありました。こうした地道な商品戦略により、豆腐を核とした新規事業領域の開拓や収益力の底上げが進められています。

店舗展開の戦略では、直営店とフランチャイズ加盟店の双方で出店を推進しています。2024年9月末時点で直営30店舗・加盟店392店舗、合計422店舗を展開しており、前年同期比で店舗純増4店舗(新規出店39店舗、閉店35店舗)と着実にネットワークを広げています。特にフランチャイズ展開は積極的で、「利益確保可能な物件と人材が確保できれば積極出店する」方針を掲げており、関東を中心に地域密着型の販売網を強化しています。さらに、常設店舗だけでなく百貨店やイベントでの催事出店も年間10本以上実施しており、店舗を持たない地域でも売上拡大とブランド浸透を図っています。実際、2024年9月期は新規出店こそ適切な物件が見つからず計画未達でしたが、その分催事開催を計画以上に行い利益に貢献したと報告されています。このように実店舗と催事・通販を組み合わせた多面的なチャネル戦略で、市場シェア拡大を目指しています。

海外展開に関しては、篠崎屋自身はまだ国内市場に注力しており直接的な海外進出事例はありません。ただし、業界全体を見渡すと日本の豆腐・豆乳製品の需要は海外でも高まりつつあります。篠崎屋も自社商品の通信販売(オンラインショップ)を展開しており、今後は越境ECや海外現地企業との提携によって海外市場にアプローチする余地があるでしょう。実際、同業他社のさとの雪食品は長期保存可能な無菌充填パック入り豆腐の海外需要を取り込んで売上を伸ばしています。篠崎屋もまずは国内でのブランド力と収益基盤を固めた上で、将来的にはアジア圏を中心に海外市場への展開を模索する可能性があります。足元では2023年11月に代表取締役の交代を実施し、新体制でガバナンスを強化しつつ「株価上昇のため業績回復に注力する」と明言しています。こうした経営刷新の動きも含め、篠崎屋は事業の選択と集中を進めながら、中長期的な成長戦略を描いていると言えるでしょう。

同業他社との比較:相模屋・さとの雪・紀文食品の競争力

同業他社と比較すると、篠崎屋の競争力と独自性が浮き彫りになります。業界最大手の相模屋食料は群馬県の豆腐メーカーで、この「失われた20年」と言われる停滞期に売上高を約23億円から400億円規模へと飛躍させ、国内トップシェア企業となりました。豆腐市場自体は決して右肩上がりではなかったにもかかわらず、相模屋は大胆な商品開発戦略で業界を牽引したのです。その代表例が機動戦士ガンダムとコラボした「ザクとうふ」や、ウニの風味を再現した「うにのようなビヨンドとうふ」といった話題商品群で、従来の常識にとらわれないユニークな製品が消費者の注目を集めました。実際、相模屋の鳥越社長は「良質な植物性タンパク質は今後の食卓の主役になり得る」と語り、自社の使命を「日本の伝統である豆腐文化を守り、その未来を創ること」に置いています。篠崎屋も相模屋ほどスケールは大きくないものの、「豆腐を単なる白い塊ではなく魅力ある食べ物に進化させたい」という点で志は通じるものがあり、自社店舗でのスイーツ系商品の投入など独創性では負けていません。

次に徳島県発祥のさとの雪食品を見てみましょう。同社は食品機械大手・四国化工機のグループ会社で、スーパー向け豆腐・大豆加工食品の全国展開に強みを持ちます。さとの雪は既に2018年度に売上高102億円を達成し、初めて100億円の大台を突破しました。背景には、単身者でも使いやすい小分けパック豆腐など付加価値の高い商品の開発で量販店チャネルを拡大したことがあります。さらに無菌充填のロングライフ豆腐を武器に海外市場にも販路を広げ、欧米やアジアで需要を取り込んでいる点も特徴です。同社は将来的に豆腐由来の菓子類など新分野への展開も計画しており、2025年度までに売上高130億円を目指すと発表しています。篠崎屋もさとの雪ほどの規模はありませんが、“ヘルシー志向”や“簡便志向”といった市場ニーズに応える商品開発という点では共通しており、自社ブランド店舗での健康志向スイーツ提供などで差別化を図っています。

また、東京銀座に本社を置く紀文食品も豆腐業界における名の知れた存在です。紀文食品(東証プライム上場、コード:2933)は主に魚肉練り製品で有名ですが、関連会社を通じて豆乳やこんにゃく麺などヘルシー志向商品の分野にも乗り出しており、例えば「糖質0g麺」低糖質麺)シリーズはヒット商品として知られます。紀文のような総合食品メーカーは商品ラインナップの幅広さとブランド力で優位性があり、販路も国内外に及ぶため、篠崎屋のような単一カテゴリ専門企業にとっては強力な競合と言えます。ただ篠崎屋は、自社直営店ネットワークを駆使した小回りの利く販売戦略と、大量生産品にはない手作り感や鮮度を武器に差別化しています。例えば、朝に製造したできたての豆腐やおから惣菜を日配で各店舗に届けるなど、地産地消的なフットワークは大手には真似しにくい強みです。総じて、篠崎屋は業界大手ほどの規模はないものの、独自の業態と商品開発力によってニッチ市場での存在感を発揮しており、競争環境の中でもユニークなポジションを築いていると評価できます。

株価トレンドとテクニカル分析 – 2025年8月20日時点

篠崎屋の株価は2025年前半から大きく動意づいており、テクニカル面でも注目されています。2025年4月上旬に年初来安値の66円を付けた後、業績回復期待などを背景に急速に買いが入り、7月9日には年初来高値となる166円まで急騰しました。約3ヶ月で株価2.5倍以上という力強い上昇となり、小型食品株ながら市場で脚光を浴びた格好です。その後は利益確定売りに押されて調整局面に入り、8月20日時点の終値は116円となっています。奇しくも、この116円前後という水準は66円→166円の上昇幅100円のほぼ半値戻しに相当しており、一種のテクニカル節目となっています。実際8月中旬以降は100~120円台でのもみ合いが続いており、大きな上昇後のエネルギー充電期間に入っているようにも見受けられます。

テクニカル指標を確認すると、株価は主要な移動平均線を依然上回っています。8月21日時点で株価121円に対し5日線+約3%、25日線+約9%、75日線+約19%の水準にあり、中長期トレンドは上向き基調を維持しています。特に75日移動平均線(およそ3ヶ月線)との差異が+19%と大きいことから、4~7月の急騰によって長期トレンドが大幅に切り上がったことが読み取れます。出来高面でも、7月の高値形成時には日次で数百万株規模の売買が成立しており、それまで閑散としていた銘柄としては異例の高水準でした。この出来高増加に伴い信用取引の買残も積み上がりましたが、8月に入ってから買残は減少傾向にあり、信用需給の面では過熱感が徐々に解消されつつあります。

一方で投資指標を見ると、割安感には乏しい状況です。現時点の株価水準で計算される予想PERは約43倍にも達しており、同業の食品セクター平均と比べても高水準です(利益水準が小さいためPERが跳ね上がっている面もあります)。PBRは約1.6倍で純資産倍率としては適正圏ながら、配当利回りは無配のためゼロです。つまり、株価には足元の業績回復期待や将来成長へのプレミアムが既にかなり織り込まれていると考えられます。そのため、仮に業績モメンタムが鈍化した場合や市場全体の地合い悪化があれば、株価が再び下押しされるリスクも念頭に置く必要があります。実際、7月高値後の調整ではわずか数週間で高値から30%以上下落しており、小型株ゆえのボラティリティの高さには注意が必要です。

では投資タイミングとしてはどうかというと、8月20日現在の株価116円前後は前述のようにテクニカルな支持水準付近でもあり、一旦の下げ止まりを見せているポイントです。今後、株価が再び25日線など短期トレンドを上抜き上昇に転じれば、7月高値166円に向けたリバウンド局面が期待できるでしょう。一方で調整が長引き100円近辺の心理的節目を割り込むようだと、75日線(約101円)やその下の75~80円台にある価格帯が次の下値メドとなります。幸い、直近の決算では増収増益を達成し営業利益が前年同期比+142%と大幅改善するなど業績トレンドは良好です。市場でも「強く買いたい」など強気スタンスの個人投資家が6割を占め、弱気はほぼ見られない状況で投資家センチメントは前向きと言えます。今後は9月期本決算や来期見通しが株価の方向性を左右する重要イベントとなりそうです。テクニカルには上昇トレンド継続中とはいえ、業績動向や外部環境によって変動しやすいため、押し目を拾う場合も慎重に分散投資で臨むのが望ましいでしょう。

まとめ:篠崎屋の競争力と投資見通し

以上の分析を踏まえると、篠崎屋(2926)はユニークな直営小売モデルと商品開発力によって伝統的な豆腐業界で独自の地位を築く一方、規模の面では大手他社と比べ依然見劣りするのも事実です。ただ、近年は経営改革が奏功して収益が改善傾向にあり、株主還元策でも自己株式消却など前向きな動きが見られます。株価も業績回復期待を織り込み大きく上昇しましたが、その反動で割高感も出ているため、更なる上昇には「実際の成長」の裏付けが不可欠でしょう。新商品の定着や新規出店による売上拡大が数字となって現れ、例えば配当復活や株価基準(流通時価総額10億円)のクリアといった成果が出れば、株式市場で再評価される可能性があります。反面、食品小売業は原材料高や人件費上昇などコスト増圧力も大きく、消費動向に業績が左右されやすいリスクも伴います。篠崎屋はそうした逆風に対応すべく、生産性向上や商品力強化で乗り切ろうとしています。総じて、篠崎屋の株式は高い成長ポテンシャルと中程度のリスクを併せ持つ投資対象と言えるでしょう。業界トップ企業にはない機動力と独創性でどこまで成長を遂げるか、今後の展開を注視しつつ、投資タイミングについてはテクニカル指標と業績発表の節目を見極めて判断することが重要です。