2000年以降の「今見ると笑うしかない」IR発表事例まとめ

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事例1: IBダイワ – 「全てを失った」資源ビジネスIR

  • IR発表時期と内容: 2011年1月、東証JASDAQ上場のIBダイワ(3587)は「天然資源開発投資事業の廃止」に関するIRを発表しました。当社は過去に約76.4億円もの資金調達(エクイティファイナンス)を行い、そのほとんどを同事業に投じたと説明。しかし「事業の廃止をもって事業リソースのすべてを失うこととなりました」と記載され、事実上“全てを失った”ことを自ら認める内容でした。さらに奇妙なことに、このIR文書ファイルのプロパティ(作成情報)が「公募による新株式発行」となっており、「懲りずにまた増資する気か」と投資家の失笑を買いました。
  • 当時の株価の反応: 資源ビジネス参入は以前から話題になっていたものの、今回のIRで壮大な計画が頓挫したことが露呈し、投資家の反応は冷ややかでした。ネット掲示板では「おまえの会社って株価◯円だけど、俺の計算だと価値8円くらいだぞ」と揶揄する声もあり(※当時株価数十円台)、「伝説級のクソIR」として語り草になりました。株価も材料出尽くしで失望売りとなり、わずかに残っていた期待がしぼむ形となりました。
  • その後の展開: IBダイワは社名をプリンシバルに変更後、さらにグローバルアジアホールディングスと改称しましたが業績は回復せず、内部管理体制の不備から2012年に特設注意市場銘柄に指定されました。改善できないまま2015年9月に上場廃止が決定。創業(1963年上場)から50年以上の歴史を持つ企業でしたが、資源開発の大風呂敷は最後まで広がらずじまいでした。
  • 現在の評価: “IBダイワ事件”は、企業が誇大な事業計画をぶち上げて資金調達しながら、結局成果を出せず破綻へ向かった典型例とされています。当時のIR文言「事業リソースのすべてを失うこととなりました」は、あまりにストレートすぎて「伝説のIR」として投資家の記憶に刻まれています。
  • 投資家が学ぶべき教訓: 「増資→新規事業→失敗→また増資」のループに要注意。企業が資金調達を繰り返し大きな計画を語る場合、実行力や実績を冷静に見極める必要があります。IRの美辞麗句よりも実態をチェックし、“夢物語”に踊らされない慎重さが求められます。特に小型株の資源ビジネス参入などは過去何度も誇大IR→失敗を繰り返しており、投資家には良い反面教師となりました。

事例2: 日本風力開発 – 補助金頼みの成長戦略が崩壊

  • IR発表時期と内容: 2010年前後、風力発電ベンチャーの日本風力開発(当時ヘラクレス上場)は国策の新エネルギーとして注目を集め、海外展開も含めた壮大な売上予想を掲げていました。しかし2010年に発表したIR資料では、「政府補助金の新規募集の制限・中断などにより、ビジネスモデル自体の存続に関わる状況が現出しております」と苦しい現状を告白。さらに2011年3月期の売上予想380億円のうち320億円を占めていた海外売上計画を丸ごと削除する羽目になり、大幅な業績下方修正となりました。
  • 当時の株価の反応: かつて風力発電の雄として将来を嘱望されていた同社ですが、補助金頼みの事業モデルの脆弱さが露呈すると市場の評価は急降下しました。売上予想の8割超を占めていた海外案件が吹き飛んだインパクトは大きく、株価は急落。一時は買い人気だった新エネルギー関連株も、このIRを境に「絵に描いた餅だったのか」と失望売りが広がりました。株主からは「予想が粉飾同然だったのでは?」との疑念も生じ、金融当局も有価証券報告書の虚偽記載として調査に乗り出す騒ぎとなりました。
  • その後の展開: 日本風力開発は経営難から外部資本の支援を仰ぐことになり、創業者は経営権を失いました。2014年には産業革新機構(現INCJ)などが出資する形で再建策が図られ、上場廃止となっています。その後は社名変更と非上場化を経て事業継続はしたものの、当初掲げた海外大型案件は実現せず、国内中心の地道な展開に縮小しています。
  • 現在の評価: 同社の迷走は、「補助金ビジネスの落とし穴」として振り返られています。国の追い風があれば急成長も可能ですが、一旦政策方針が変わると途端に立ち行かなくなるリスクを露呈しました。また、出来もしない巨額の海外売上を計上していた点は投資家の不信を招き、「ほぼ粉飾に近い予想を株主に提示していた」との批判もあります。
  • 投資家が学ぶべき教訓: 政策期待やテーマ性だけで飛びつく危うさ。新興企業のIR発表はバラ色の将来計画が語られがちですが、その前提条件(補助金や市場環境など)の現実性を検証することが重要です。特に大型予算の案件や海外売上計画は、その裏付け情報(契約の有無等)をチェックするべきです。「風が吹けば桶屋が儲かる」式の楽観シナリオには眉に唾をつけ、会社側の過度な期待先行に踊らされないことが肝心です。

事例3: ネクス (NCXX) – 社名変更IRで「次元を超越した」電波文

  • IR発表時期と内容: 2012年、無線通信機器メーカーのネットインデックス(JASDAQ上場、6634)は社名を「ネクス (NCXX)」に変更する旨を発表。その際のIRリリースには社名変更の理由が熱く語られていましたが、その文面が奇抜でした。「次元を超越して(プラグの端子が11次元=宇宙)」など、一読してポカンとしてしまう電波系フレーズがちりばめられていたのです。まるでSFか中二病じみた表現に、投資家は困惑しました。
  • 当時の株価の反応: 社名変更自体は企業イメージ刷新として珍しいことではありませんが、ネーミングの由来説明があまりに怪電波だったため、掲示板では嘲笑の的に。株価は一時的に物色されたものの長続きせず、「名前変えても中身は変わらない」と冷めた視線が向けられました。ネット上で「IR担当は何をキメてるんだ」「ポエムIR」と話題沸騰し、プチ炎上状態になりました。
  • その後の展開: NCXX(ネクス)はその後も通信機器やIoT関連事業を続けていますが、当時期待されたような飛躍的成長は遂げていません。奇抜なIRで注目を集めたものの業績は低迷が続き、株価も発表当時の高値を取り戻せない状況です。結局、“11次元”云々の社名変更が業績に寄与した形跡はなく、現在も小型株として地味な推移が続いています。
  • 現在の評価: 「伝説のポエムIR」として今なお語り草です。「次元を超越」などインパクトある言葉だけが独り歩きし、実際の事業とのギャップが笑いを誘いました。当時を知る投資家からは「あれ以上に意味不明なIRはそう無い」と評されるほどで、IR説明文のお手本の悪例として半ば教科書的な存在です。
  • 投資家が学ぶべき教訓: IR文面の華美さや奇抜さに惑わされない。企業が本質ではなくイメージ先行のIRを出すときは要注意です。「結局何を伝えたいIRなのか?」を冷静に考え、内容が伴っているか検証する姿勢が必要でしょう。社名変更やビジョン表明はそれ自体が収益を生むわけではありません。投資判断は数字と具体策に基づくべきであり、耳障りの良いキーワードの羅列には警戒が肝要です。

事例4: インスパイアー – リストラしすぎて「営業できません」惨状IR

  • IR発表時期と内容: 2013年11月14日、JASDAQ上場のインスパイアー株式会社(旧フォーバルクリエーティブ、証券コード3800)は第2四半期決算を発表。その決算短信で明らかになったのは衝撃の実態でした。4~9月期の売上高がわずか2万3000円(前年同期比99.9%減)とほぼゼロに等しく、決算短信の売上欄は「―」と記載。さらに注目を集めたのがIR中の一文で、主力だったIT事業について「昨年から事業縮小を開始し、リストラを進めた結果、営業スタッフがいなくなり新たな営業が行えない状況になっております」と記載されたのです。「人減らししすぎて営業する人がゼロ」という前代未聞の内容に、誰もが唖然としました。
  • 当時の株価の反応: 発表直後からネット上では「上場企業なのに半期売上2万円!?」「営業マン皆クビにしちゃったってこと?」と話題沸騰。“時価総額最低銘柄”としてヤフー掲示板などでネタ扱いされました。この期の営業損失は▲5600万円に及び、もはや上場ゴミ株と揶揄されました。「ここまで来ると笑うしかない」と多くの個人投資家が自虐交じりに語るほどで、同社株は“ネタ銘柄”として出来高だけ一時増える場面もありました。
  • その後の展開: 極度の債務超過と巨額訴訟リスクにより経営は行き詰まり、インスパイアーは2015年10月に破産手続開始決定を受け倒産しました(負債約9億円)。上場は2014年に廃止となり、社歴約23年の幕を閉じています。リストラしすぎて自滅したIRのインパクトは強烈で、その後も似たケースはほとんど見当たらず、稀有な失敗例として語られています。
  • 現在の評価: 「半期売上2万円」「営業ゼロ」といったフレーズは伝説化し、メディアでも取り上げられました。株主への説明資料にここまで赤裸々かつ情けない状況を書く例は珍しく、投資家の間では「上場ゴミ株が行き着く先」「残念IRのお手本」として半ば笑い話のように扱われます。当時JASDAQには数多くの低収益会社がありましたが、インスパイアーはその象徴的存在でした。
  • 投資家が学ぶべき教訓: 財務・事業が破綻状態の企業には近寄らない。IRは企業の厳しい状況を正直に伝えることもあります。売上ゼロ同然や債務超過の発表を目にしたら、“安いから”と飛びつくのは危険です。本件では「営業できない」と自ら認める異例のIRでしたが、投資家側も早期に見切りをつける決断力が求められます。どんなに株価が安くても、事業継続力を失った企業は結局紙クズになるという教訓を残しました。

事例5: REVOLUTION – 「QUOカード12万円優待」を謳い結局ナシ

  • IR発表時期と内容: 不動産業のREVOLUTION(8894、旧社名・原弘産)は2024年10月に驚きの株主優待制度を発表しました。なんと年12万円相当のQUOカードPayを株主に配布するという超高額優待です(半年毎に6万円相当×年2回)。当時の株価は50円前後と低位ながら、この優待利回りは数百%に達する破格の内容でした。当然ながらメディアやSNSでも「本当に大丈夫か?」と大きく取り上げられました。しかしその後、初回実施予定だった2025年4月末を前に突如優待廃止を発表します(2025年3月11日付)。結局、一度も実施されないまま幻に終わったのです。
  • 当時の株価の反応: 優待新設発表時には個人投資家の物色が殺到し、株価は一時ストップ高を交えて急騰しました。「QUOカード欲しさ」に出来高も急増し、短期マネーが殺到する“優待祭り”状態でした。しかし廃止IRが出ると一転、株価は急落。優待権利取り目的で持ち越していた投資家は大損害を被り、掲示板には怒りや落胆の声が渦巻きました。「QUOカード12万円どこいった?」という見出しでニュースになるなど、個人投資家の激怒を買った事例です。
  • その後の展開: なぜこんな優待を発表し撤回したのかについて、第三者委員会の調査報告書も公表されました。それによれば、優待コスト試算のミスや財務状況の悪化で「継続困難」と判断したためとされています。結局、発表当時から「優待目当ての株価吊り上げでは?」との疑念も現実味を帯び、優待発表直後に高値で株を売り抜けていた関係者がいたことも指摘されています。本件を受け東証も注視し、同社はガバナンス改善を迫られていますが、信用失墜は甚大です。
  • 現在の評価: 「優待やるやる詐欺」として投資家に強烈な印象を残しました。CBCなど大手メディアも「個人投資家が激怒!」と報じ、全国区で恥を晒す結果に。優待新設~廃止までの一連の迷走は2020年代最高クラスのクソIR事案とも言われ、真面目な投資家ほど呆れ返りました。現在のREVOLUTION株価は急落後に低迷し、経営陣への不信感から市場の評価は厳しいままです。
  • 投資家が学ぶべき教訓: 「ウマい話には裏がある」と肝に銘じる。異常に利回りの良い株主優待や配当策は、株価を釣り上げる意図がないか慎重に疑う必要があります。企業側の発表を鵜呑みにせず、本当に実行可能か財務や収益をチェックしましょう。今回のように一度も実施されず廃止という最悪のケースも現実に起きています。高額優待に飛びついた結果、大損を被った投資家も多く、「甘い誘いに注意せよ」という教訓を改めて市場に刻みました。

事例6: 三菱重工業・スペースジェット(旧MRJ) – 国産ジェット機プロジェクトの壮大な頓挫

  • IR発表時期と内容: 2008年、三菱重工業(7011)は国産初のジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」事業化を正式発表しました。50年ぶりの国産機開発として国家的な注目を集め、当初は2013年の初号機納入を目指すとされました。受注もANAなどから数百機獲得し(最終的な受注残は267機)、2015年には初飛行も成功。しかしプロジェクトは度重なる設計変更と認証遅れで計6回も納入延期を繰り返し、機体名称を「スペースジェット(MSJ)」に改め再起を図るも状況は好転せず、2023年2月に開発中止が決定しました。総開発費1兆円超とも言われる大事業が白紙に戻った形です。
  • 当時の株価の反応: 発表当初、三菱重工の株価への直接のインパクトは限定的でしたが、日本初のジェット機構想として世間の期待は非常に高いものがありました。試作機完成や試験飛行成功のニュースでは一時的に株価が物色される場面もありました。しかし延期が長期化するにつれ市場の評価も次第に織り込み済みとなり、「また遅延」「大丈夫か?」と冷めた反応に。2020年以降は開発凍結観測が報じられるたび株価は重くなり、開発中止発表時も「やはりか」と大きなサプライズはありませんでした。
  • その後の展開: 開発中止決定後、同プロジェクトを担っていた子会社(三菱航空機)は解散手続きに入り、三菱重工は巨額損失を計上しました。一方、経済産業省は「スペースジェットの反省を生かし、2030年代に官民で国産旅客機開発を目指す」との戦略を発表。今度は一社単独ではなく複数企業の連携で挑む方針ですが、市場からは「まずスペースジェットの総括をすべき」と厳しい目が向けられています。機体は解体され、幻の国産ジェット機となりました
  • 現在の評価: スペースジェット計画は、「絵に描いた餅」に終わった残念な国家プロジェクトとして振り返られています。世界のリージョナル機市場で競合に後れを取り、認証取得の難しさも痛感させられました。投資家から見ると、三菱重工という大企業でさえ過度な楽観計画の代償を支払うことになり、経営陣の見通しの甘さが厳しく批判されています。「6度の納期延期」という事実は今見ると苦笑するしかなく、社内外に多くの教訓を残しました。
  • 投資家が学ぶべき教訓: 大企業の大型プロジェクトでも安易に信じ込まない。華々しいIR発表や国策案件でも、成功が約束されたわけではないことをスペースジェットは示しました。開発計画の進捗や外部環境をウォッチし、リスクを織り込む視点が大切です。また、事業の採算性にも注目する必要があります。三菱重工は最終的に「採算が見込めない」と判断し撤退しましたが、投資家としても「夢」だけでなく「収支計算」を常に意識すべきでしょう。どんなIRも鵜呑みにせず、自ら現実性を吟味する姿勢が求められます。

各事例とも、当時は大きな話題となったIR発表でしたが、現実とのギャップにより今振り返ると失笑せざるを得ない結末となっています。投資家にとってエンタメ性のあるネタではありますが、同時に「誇張IRに踊らされない」「企業発表の裏を読む」という重要な投資教育的教訓を与えてくれるものです。過去のこれら失敗事例を踏まえ、今後も冷静かつ懐疑的にIR情報と向き合うことが、健全な資産運用につながるでしょう。