2025年に入り、日本の上場企業で相次いで不適切会計や不正疑惑が発覚し、それぞれ第三者委員会(社外の専門家を含む独立調査チーム)が設置されました。以下では、2025年1月から8月までにそうした事態に至った主な上場企業について、背景・第三者委員会設置の理由・調査内容・調査結果と処分・株価や上場維持への影響をわかりやすく整理します。
※第三者委員会とは、会社の不祥事が疑われる際に、企業から独立した弁護士や会計士などで構成し、客観的に事実関係を徹底調査するための組織です。
オルツ: 上場直後の大規模粉飾決算疑惑
疑惑の背景: AIソフト開発の新興企業オルツ(東証グロース)は、2024年10月に新規上場した直後から売上高を水増ししているとの疑念が浮上しました。2025年4月、証券取引等監視委員会の強制調査が入り、決算の粉飾(架空売上の過大計上)が行われている可能性が明らかになりました。
第三者委員会の設置理由: 売上の過大計上疑惑を受けて、同社は2025年4月25日付で第三者委員会を設置したと発表しました。外部の弁護士・会計士を招き、上場前後の財務実態を客観的に調査するためです。
調査内容: 調査委は、オルツが提供するクラウド型議事録サービス「AI GIJIROKU」の契約件数や売上計上の実態を中心に、広告宣伝費・研究開発費などの経理処理も精査しました。その結果、2020年12月期から2024年12月期にかけて約119億円もの売上を過大計上し、経費も不適切に処理していたことが判明しました。例えば、有料アカウント数について、実際は2025年7月時点で約5,170件だったにも関わらず、2024年末時点では28,699件と過大に公表していたのです。
調査結果と処分: 2025年7月28日に第三者委員会の調査報告書が公表され、同社の不正会計(粉飾決算)が正式に認定されました。この重大な結論を受け、オルツ創業者で代表取締役社長だった米倉千貴氏は7月28日付で社長を辞任しています。また、調査報告書ではガバナンスの欠如も厳しく指摘され、関与した経営陣への然るべき処分と再発防止策の徹底が提言されました。
株価・上場への影響: オルツ株は疑惑発覚後に急落し、東京証券取引所から「監理銘柄(審査中)」に指定されました。これは上場廃止の可能性が高まったことを意味します。その後、同社は2025年7月30日に経営破綻(民事再生法申請)し、東証は8月31日付でオルツ株の上場廃止を決定しました。上場からわずか10か月での破綻・退場という異例の事態に、投資家や市場には大きな衝撃が走っています。
レボリューション: 異例の株主優待を巡る不正疑惑
疑惑の背景: 不動産業の株式会社REVOLUTION(レボリューション)(東証スタンダード)は、一度も実施されなかった高利回りの株主優待制度を巡って不透明な動きがありました。2022年に発表した株主優待は配当利回り並みに魅力的な内容でしたが、結局一度も実行されないまま2023年に撤回。この不自然さから「株主優待発表は株価つり上げ目的ではないか」「経営陣に裏で何か不正があるのでは」と疑われるようになりました。
第三者委員会の設置理由: 2025年3月、中立的な立場で事実関係を解明すべく、同社は株主優待に関する問題の調査を目的に第三者委員会を設置しました。特に、大株主(筆頭株主)の影響力や優待制度設計の経緯について、社外の専門家の目で調べる必要性があったためです。
調査内容: 第三者委員会は、問題となった株主優待制度の企画・撤回の経緯や、それに関与した人物関係を調査しました。特に、大株主X氏(個人)が当該優待の導入と撤回にどの程度関与したか、経営陣との力関係はどうだったのかを詳細に検証しています。また、他に財務上の不適切な取引が無いか、会社法や金融商品取引法に抵触する行為が無かったかについても調べられました。
調査結果と処分: 2025年7月14日に第三者委員会の調査報告書が公表され、問題の優待制度について衝撃的な事実が判明しました。同報告書は、未実施に終わった高利回り優待は会社法違反の疑いがあると指摘し、さらに特定の大株主が経営に過度に関与していたことを認定しました。実際、当時の社長ですら「大株主の意向に逆らえなかった」と証言しており、筆頭株主による実質的な会社支配が浮き彫りになりました。この結果を受け、レボリューションでは経営体制の刷新が図られ、当時の代表取締役社長は既に辞任しており、新経営陣が再発防止策を講じています。また、大株主に対してもガバナンス強化の観点から適切な対応(経営への関与見直し等)を取る方針が示されました。
株価・上場維持への影響: 本件公表後、同社株価は急落し、一時は取引停止になる場面もありました。ただし財務上の直接的な粉飾決算は確認されなかったため、上場廃止には至っていません。もっとも、調査の過程で監査法人が交代するなど混乱も生じ、2025年10月期第2四半期報告書の提出期限延長を余儀なくされる事態となりました。現在、レボリューションは経営方針の抜本見直しと再発防止策の実行に取り組んでおり、東京証券取引所からもガバナンス改善を注視されています。今後、予定通りに財務報告を提出し信頼を回復できるかが、上場維持の鍵となります。
アルファクス・フード・システム: 粉飾決算と上場廃止の危機
疑惑の背景: 外食産業向けITサービスを提供するアルファクス・フード・システム(AFS)(東証グロース)では、2023年度の決算を巡り不自然な売上計上が疑われました。同社は配膳ロボットの販売事業等を手掛けていますが、期末直前に大量の売上を計上して目標を達成したことに対し、社内外から「本当にそんなに売れたのか?」と不信の目が向けられたのです。
第三者委員会の設置理由: 2024年末から社内調査が始まり、2025年5月8日付で外部有識者を含む特別調査委員会(第三者委員会)が設置されました。目的は、売上計上や子会社取引の適正性を徹底的に検証し、不適切会計の有無を明らかにすることでした。
調査内容: 調査委員会は、大きく2つの疑惑を中心に調べました。【1】配膳ロボットの売上計上: 2023年9月期末に、本来まだ納品・設置していないロボット60台分の売上約9,192万円を前倒し計上していた件。倉庫に置かれたままのロボットについて架空の「検収書類」にサインをもらい、納品していないのに検収済みとして売上に計上していたのです。【2】ホテル売却取引: 2022年11月にグループが保有していたホテルを第三者に売却したとされる件です。一見他社に売った形でしたが、実際には社長夫妻の関係者が設立・資金提供した会社が買い手であり、形式上の第三者譲渡で負債を隠そうとした可能性が指摘されました。このため本来は連結子会社とすべき対象を連結から外し、不正に損失を免れようとした疑いがあります。
調査結果と処分: 2025年7月25日に特別調査委員会の報告書(公表版)が公表され、一連の不適切会計の詳細が明らかになりました。報告書によれば、売上の早期計上、連結対象外しなど複数の不正会計処理が行われていたことが確認されました。これを受け、AFS社内では直ちに経営責任の追及が行われ、藤井由実子社長(当時)および関与した幹部の辞任が発表されました。また、再発防止策として、夫婦で代表を務めるというガバナンス上の問題点を解消するため経営体制を変更し、社外取締役を増員して内部牽制機能を強化する措置が取られています。
株価・上場維持への影響: アルファクス社の株価は不正発覚により急落し、同社は決算訂正や報告書提出の遅延に陥りました。東京証券取引所は同社株を2025年7月4日付で監理銘柄(審査中)に指定し、財務報告の早期提出を求めました。しかしながら、問題の深刻さから監査手続きが大幅に遅れ、2025年9月期の半期報告書提出期限に間に合わない事態となっています。事実、期限経過後8営業日を過ぎても半期報告書が提出されなかったため、東証は同社株の上場廃止を決定しました。2025年8月5日から「整理銘柄」に指定され、9月6日付で上場廃止(株式市場から退場)となる予定です。上場維持の瀬戸際での苦渋の決定となり、投資家にも大きな損失と教訓を残す結果となりました。
ダイワ通信: 経営トップによる不正取引と粉飾の発覚
疑惑の背景: 情報通信サービス業のダイワ通信株式会社(東証スタンダード)では、2024年末に連結子会社で売上の過大計上や在庫隠しが行われている疑いが持ち上がりました。2025年2月には、子会社の不適切会計処理により第三者委員会(特別調査委員会)が設置され、調査が開始されます。この調査で、子会社の営業部門が収益認識の基準を満たさないまま売上を前倒し計上し、在庫を別倉庫に移すなど監査をごまかす行為が行われていたことが判明しました。当時から同社の常務(子会社社長兼務)や取締役管理部長は不正の継続を認識していながら上場前に是正せず、内部監査担当者も不正を黙認・加担していたことが明らかになりました。
第三者委員会の設置理由: 上記の子会社粉飾疑惑に対処するため、ダイワ通信は2025年1月に調査委員会を発足し、4月21日に第三者委員会の調査報告書を受領・公表しました。さらにその後の監査過程で、新たに経営トップ自ら絡む不正疑惑が浮上します。それは、社長個人の資産管理会社が所有する不動産を第三者を装って会社に賃貸し、実質的に会社資金を社長へ還流させていたというものです。この関連当事者取引の疑いに対し、同社は2025年6月2日付で再度特別調査委員会を設置し、社長関与の取引を徹底調査しました。
調査内容: 第一次調査では子会社の売上不正(架空計上・在庫隠し)について事実関係を調べました。第二次調査(特別調査委)では、社長やその資産管理会社が所有する土地・マンション計4件を巡る取引を解明しています。それら不動産は一見すると第三者会社X社・Y社が所有しダイワ通信に貸している形でしたが、実態はX社・Y社が中間に入っていただけで賃料の大半が社長個人やその会社に渡っていたことが報告書で明らかになりました。さらに、この4物件の賃貸については取締役会で利益相反取引の承認決議を一切しておらず、会社法違反に該当すると断定されています。調査では他にも、社長の家族・親族に対する不正な支出など、ガバナンス崩壊を示す事例が次々判明しました。
調査結果と処分: これら一連の不正により、ダイワ通信は上場時の申請に虚偽があったとして東京証券取引所から厳しい措置を受けました。実際、同社は2022年12月に東証スタンダードへ新規上場しましたが、その際提出した有価証券報告書Ⅱの部で「関連当事者との取引は子会社2社との賃貸契約のみ」と虚偽記載していたことが確認されています。これは上場審査への重大な虚偽報告(宣誓書違反)であり、東証は2025年6月19日付で上場契約違約金1,440万円の支払いを同社に命じるとともに、上場審査のやり直しを求める改善期間入り(猶予期間入り)としました。社内的には、岩本秀成社長は責任を取り8月に代表取締役を辞任(取締役からも退任)し、ガバナンス刷新が図られています。不正を見逃した管理部門長や子会社役員についても処分が公表され、内部統制の強化策が導入されています。
株価・上場維持への影響: ダイワ通信の株価は一連の不祥事で下落しましたが、現在も市場に残っています。同社は東証から改善報告書の提出と再発防止の徹底を求められており、一定の猶予期間内にガバナンス改善が認められない場合、上場廃止もあり得る状況です。もっとも、主要な不正は既に公表・是正措置中であり、新経営陣の下で信頼回復に努める方針です。同社は「コンプライアンス順守を徹底し、信頼回復に全力を尽くす」と表明しており、引き続き上場維持に向けて経営改革を進めています。
アライドアーキテクツ: 子会社事業部による不適切会計の連鎖
疑惑の背景: マーケティング支援事業を展開するアライドアーキテクツ株式会社(東証グロース)は、自社の一部門である「クロスボーダーカンパニー」(訪日インバウンド・越境EC支援事業)において、売掛金の入金遅延や不自然な会計処理が見つかったことから調査を開始しました。2024年5月、当該事業部で売上代金の回収が大幅に遅れている案件が発覚し、内部調査の結果、担当部門長A氏が売上の架空計上や費用付替えなど不正行為を行っていたと自白したのです。
第三者委員会の設置理由: 社内調査で不正の存在が確認されたため、同社は2024年12月に外部専門家を加えた調査委員会(第三者委員会)を設置しました。調査範囲は当初2020年第2四半期まで遡りましたが、その後新たな問題が次々判明したため2025年1月末に調査範囲を拡大し、委員を増員して対応しています。最終的に2020年から2024年Q3までの約4年間に及ぶ不正の全貌解明が委員会の使命となりました。
調査内容: 第三者委員会の報告によれば、A氏が統括するクロスボーダー事業部で6つの不正スキームが行われていました。主なものは以下のとおりです。
- 売上の前倒し計上: 納品やサービス提供完了前に顧客から検収済み承認だけを先にもらい、実態に先行して売上を計上。
- 原価の費用付替え: 本来製品原価に計上すべきコストを販管費に振り替え、一時的に利益を嵩上げ。
- 原価の後倒し計上: 当期に計上すべき原価を意図的に翌期以降に先送りし、当期利益を水増し。
- 架空クロス取引: グループ内外の取引を装い存在しない売上と仕入を同額発生させることで、一部利益だけを計上するような不正。
- 架空売上計上: 実際には契約のない架空の取引をでっち上げて売上計上。
- 連結消去漏れの利用: 連結決算上、本来相殺消去すべき取引を消去せず利益を過大計上。
調査委員会は各不正事案について詳細な経緯と手口を解明するとともに、背後にある組織風土や内部統制上の問題点も分析しました。
調査結果と処分: 2025年3月7日、調査委員会の報告書(公表版)が開示され、同社は2020年~2024年にかけて継続的に不適切な会計処理が行われていた事実を正式に認めました。主犯格のA氏は既に懲戒解雇されており、同氏を管理監督できなかった経営陣にも責任が及びました。中村壮秀CEO以下、当該事業に関わった複数の役職者が報酬減額や降格などの処分を受けています。また、再発防止策として、予算管理プロセスの見直しや業務フローのチェック強化、内部通報制度の活性化などが策定されました。直接の原因とされた「予算未達への心理的重圧」に対しては、現実的な目標設定と進捗モニタリングの改善を図り、一人の社員に不正の余地が集中しない内部統制の構築が急務とされています。
株価・上場維持への影響: アライドアーキテクツの場合、不正は一部事業に限られ迅速に自浄作用が働いたため、上場廃止など極端な事態には至りませんでした。同社株価は調査報告公表前後で一時下落したものの、その後は業績改善への期待もあり持ち直しています。金融庁や取引所からは特段の処分公表はなく、必要な訂正開示と再発防止策の実施により信頼回復に努めている段階です。社内では「予算達成の呪縛から組織を解放する」とのスローガンを掲げ、風通しの良い企業文化への転換を進めている最中です。
以上、2025年に第三者委員会を設置する事態となった主な上場企業の事例をまとめました。今年上半期(1~6月)だけでも不適切会計の開示は28社・29件にのぼり、その背景には業績至上主義やガバナンスの形骸化など共通の問題が指摘されています。「なぜ企業不祥事が起きるのか」「発覚後にどんな対応が取られるのか」を知ることは重要です。企業の不正は最終的に株価下落や上場廃止となり、投資家や社員など多くのステークホルダーに影響を及ぼします。不正を防ぐには、企業が業績よりコンプライアンス(法令順守)と透明性を重視し、チェック機能を社内外に確保することが欠かせません。今回の各社のケースは、企業にとってガバナンス強化の教訓であると同時に、私たちにとっても企業を監視し健全な市場を守ることの大切さを教えてくれる出来事と言えるでしょう。

