2025年の夏は例年以上の猛暑が予想されています。猛烈な暑さや異常気象は消費者の行動を変化させ、企業に思わぬ特需(とくじゅ)をもたらすことがあります。事実、気温が1℃上がるとビール類の売上が約2.5%増加するとのデータもあり、暑さによる需要増は企業の業績や株価にプラスに働く傾向があります。猛暑で冷房需要が急増した年には電力使用量が前年比で二桁増となった例もあり(東京電力管内では猛暑年の8月販売電力量が前年同月比+11.4%を記録)、まさに“災害級”の暑さが経済に影響を及ぼすのです。
特に夏場に消費が伸びるジャンルとして、以下のような業種が挙げられます:
- 清涼飲料・ビール(暑さで喉が渇き消費増)
- 家電量販店(エアコンや扇風機など冷房家電の販売増)
- 空調機器メーカー(エアコン本体や関連部品の需要増)
- アイスクリーム・冷菓(涼を取る食品の売上増)
- 衣料・サービス業(暑さ対策グッズや室内レジャー需要の増加)
これらの業界では猛暑に伴う売上アップが期待され、株式市場でも「サマーストック」(夏関連銘柄)として注目されがちです。実際、異常な暑さが続いた2018年には清涼飲料やアイスクリーム、さらには「家庭で火を使いたくない」という心理から惣菜まで含めて売上が前年度比110%以上に伸びたカテゴリーが生まれました。今年の夏も各地で記録的な猛暑日が相次いでおり、まさに気温同様“アツい”企業がどこか、投資家の関心も高まっています。
以下では、2025年の猛暑・異常気象で業績向上が期待される注目企業10銘柄をピックアップし、その理由を過去の実績や季節要因、商品特性や消費者行動の観点から解説します。定番の空調・電力関連はもちろん、意外なセクターやサービス業まで幅広く取り上げます。それでは早速見ていきましょう。
アサヒグループホールディングス(飲料)
ビール大手のアサヒグループホールディングス(東証プライム・2502)は、酷暑がプラスに働く代表的な銘柄です。猛暑になるとビールや清涼飲料の需要が飛躍的に伸びる傾向があり、「暑いとついビールを飲みたくなる」という消費者心理が業績を後押しします。実際、災害級と言われた2018年の猛暑ではビール市場全体が前年比で約2%拡大し、アサヒ飲料(清涼飲料部門)の販売数量も前年より4.0%増加するなど予想以上の伸びを示しました。また同業のキリンビールでは、2018年6~8月の売上高が前年同期比112%(特に7月は115%と大幅増)を記録し、約13年続いていた市場縮小トレンドを猛暑が覆したほどです。このように猛暑特需でビールの売上が跳ね上がる夏は、業界トップクラスのアサヒにとって業績追い風が期待できます。今年も水分補給ニーズの高まりとともにビールの売れ行きが良くなる見込みで、業績改善期待から株価にも底堅さが増すでしょう。
ダイキン工業(空調機)
エアコン最大手のダイキン工業(東証プライム・6367)も、猛暑の恩恵を直接受ける企業です。同社は家庭用から業務用まで幅広い空調機器を手掛け、国内外で高いシェアを持ちます。酷暑になればエアコン需要が急増するため、新規販売台数の増加や老朽設備の買い替え需要、フル稼働によるメンテナンス・部品交換需要など幅広い収益チャンスが生まれる銘柄です。近年の地球温暖化により世界的に気温上昇が続き、日本でも真夏日・猛暑日が年々増加する傾向にあります。そのため家庭やオフィスでの冷房稼働率アップが見込まれ、空調メーカーにとって追い風となります。実際、猛暑年にはエアコンの増産体制が敷かれるほど需要が旺盛で、省エネ性能の高い最新機種への買い替えも促進される傾向があります。世界トップクラスの技術力を持つダイキンは、この酷暑需要を取り込んで業績拡大が期待でき、中長期的にも堅調な成長を続けるでしょう。
東京電力ホールディングス(電力)
猛暑で真っ先に思い浮かぶのが電力需要の急増です。東京電力ホールディングス(東証プライム・9501)など電力会社もまた、暑さによるプラス効果が見込まれるセクターと言えます。エアコン稼働の増加に伴い電力消費量が跳ね上がれば、その分電力会社の販売電力量・収益も押し上げられます。実際、東京電力管内では記録的猛暑となった年の8月に販売電力量が前年同月比11.4%増を記録した事例があります。今年も各地で電力需給ひっ迫注意報が発令されるなど需要増が懸念されていますが、こうした中で電力各社の株価にも見直し買いが入っています。例えば2025年7月初旬には、北海道電力(9509)の株価が猛暑による電力需要増期待から前日比+5.3%と急騰し年初来高値を更新しました。東京電力も柏崎刈羽原発の再稼働やデータセンター事業参入への期待と相まって物色されており、猛暑が続く今夏は電力セクター全体に追い風となる可能性があります。
ホシザキ(業務用冷機)
飲食店やコンビニエンスストアで欠かせない製氷機・冷蔵庫。そのトップメーカーであるホシザキ(東証プライム・6465)も猛暑で業績が潤う企業の一つです。同社は世界で初めて全自動製氷機を開発した業界パイオニアで、業務用厨房機器で国内トップクラスのシェアを誇ります。猛暑になると飲食店や小売店では氷の需要が急増し、製氷機がフル稼働するだけでなく新規導入ニーズも高まります。真夏のかき氷や冷たいドリンク販売には大量の氷が必要となるため、猛暑年には店舗での製氷設備の増強・買い替えが進みやすく、ホシザキの業績は夏場に上振れしやすい傾向があります。実際に同社は典型的なサマーストックの一角として市場で注目されており、猛暑シーズンに業績好調となるケースが多くみられます。今年も酷暑により外食や小売の氷需要は旺盛とみられ、ホシザキには夏特需による収益拡大が期待されます。
ワークマン(アパレル)
意外なアパレル業界からの一銘柄が、作業服大手のワークマン(東証プライム・7564)です。全国展開する「ワークマン」は近年、低価格で高機能なアウトドア・作業向けウェアが一般層にも人気となり急成長してきました。同社は猛暑に対応した冷感素材・放熱ウェアの開発に積極的で、夏向けの高機能インナーやファン付き作業着(空調服)などユニークな商品を次々投入しています。実際、2023年には「着るエアコン」と称されるペルチェ素子内蔵の冷却ベストを発売し話題となるなど、酷暑対策グッズ分野をリードしました。また大手建設会社で空調服が標準採用となるなど近年の酷暑で空調服や冷感インナーが爆発的な人気となっており、個人向け購入も前年比50%増と品薄になるほどの盛況ぶりです。ワークマンはこれら暑さ対策ウェアを低価格で提供しているため、猛暑の夏は関連商品の売上が大きく伸びる傾向にあります。屋外作業者向けだけでなく一般のアウトドア愛好家や通勤者にも夏用アイテムが浸透しつつあり、猛暑は同社にとって大きな商機と言えるでしょう。
資生堂(化粧品)
強烈な日差しが照りつける夏は、スキンケア商品の需要も変化します。化粧品大手の資生堂(東証プライム・4911)は、猛暑による日焼け止め需要の拡大で恩恵を受けやすい企業です。同社は「アネッサ」に代表される高機能なUVカット製品や美白ケア商品に強みを持ち、年々UV対策への意識が高まる市場で存在感を示しています。猛暑で紫外線量が極めて強くなると、男女問わず日焼け止めやUVケア化粧品の売上が大幅に伸びる傾向があります。実際、近年は炎天下の屋外レジャーやスポーツ時に「こまめな塗り直し」が推奨されることもあり、一人当たりの消費量が増える傾向にあります。資生堂では国内化粧品市場がコロナ禍から回復する中で高機能の日焼け止めが好調であり、この猛暑の夏も紫外線対策ニーズが追い風となって売上押し上げが期待されます。加えて訪日観光客(インバウンド)需要の復調も重なれば、業績と株価の上昇に弾みがつく可能性があります。
セブン&アイ・ホールディングス(小売)
コンビニエンスストア業界も猛暑の特需を享受する分野です。最大手「セブン-イレブン」を傘下に持つセブン&アイ・ホールディングス(東証プライム・3382)では、夏場に飲料や冷たい食品の売上が伸びる傾向が顕著です。2025年6月には日本フランチャイズチェーン協会の発表で、全国コンビニエンスストア売上高が既存店ベースで前年同月比3.7%増と4カ月連続で前年を上回りました。これは記録的な暑さが続き、冷やし麺、ソフトドリンク、アイスクリーム、制汗剤など暑さ対策商品の販売が好調だったことが要因です。さらにおにぎりや唐揚げといった惣菜・調理食品もよく売れ、暑さで自炊を控える需要まで取り込んだことが伺えます。猛暑日が続くと「とりあえず冷たい飲み物を買おう」「火を使わず食べられるものを買おう」という消費行動が増えるため、全国2万店超を展開するセブン‐イレブンの強みが発揮されます。店内も冷房が効いているため涼を求めて来店する人も増え、猛暑はコンビニ来客数・客単価を押し上げる追い風となるでしょう。
ニトリホールディングス(家具・インテリア)
「お、ねだん以上。」でおなじみ家具小売大手のニトリホールディングス(東証プライム・9843)も、この酷暑で注目したい意外な一社です。同社が展開する「Nクール」シリーズ(接触冷感の寝具・インテリア用品)は夏の定番商品となっており、寝苦しい熱帯夜を少しでも快適に過ごしたいという需要をしっかり取り込んでいます。実際、ニトリが2012年に発売を開始したNクールシリーズは大ヒット商品となり、2025年までの累計販売数が1億点を突破したと発表されています。熱伝導率の高い生地で触れた肌の熱を瞬時に奪うという仕組みで、エアコンに頼らず快眠できないかという発想から生まれた商品です。近年は昼間も夜間も気温が下がりにくい厳しい夏が続いており、「一番冷たいNクールダブルスーパー」といった最上位モデルも投入されるなどラインナップを強化しています。まさに猛暑・熱帯夜対策の切り札としてNクールが支持されており、猛暑が続くほど関連商品の売上増によるニトリの業績押し上げが期待できるでしょう。
明治ホールディングス(食品)
夏に人気が急上昇するアイスクリーム分野からは、乳業・食品大手の明治ホールディングス(東証プライム・2269)が代表格です。同社は「明治エッセルスーパーカップ」をはじめロングセラーのアイスを多数展開し、市場シェアもトップクラスを占めます。猛暑になれば人々が冷たいアイスを求めるのは自然な流れで、アイスクリーム業界全体が活況となります。実際、日本のアイスクリーム市場は近年拡大傾向にあり、2024年度は2年連続で市場規模6000億円超えの過去最高を更新する見通しです。この背景には夏季の猛暑が強力な追い風となったことがあり、市場関係者も「2024年4~12月で前年同期比6%増」といった高成長を予想しています。こうした市場好調の恩恵は当然ながら明治など大手各社に及びます。サマーストックとしてアイス関連も見逃せないとの指摘もあり、明治ホールディングスや森永乳業、江崎グリコなどアイス主力企業が注目されています。酷暑の夏はアイスの売上が大きく伸びるため、明治にとっては収益アップと業績上振れが期待できる季節と言えるでしょう。ただし皮肉なことに、暑すぎると外出が減ってアイス販売数が落ちるとの分析もあり(猛暑が行き過ぎると逆風になる場合もあるとされます)、天候次第で需給バランスの見極めが重要です。
山善(商社・家電)
最後に取り上げるのは、扇風機で有名な山善(東証プライム・8051)です。一見すると専門商社の同社が猛暑関連?と思われるかもしれませんが、実は山善は家庭向けの扇風機やサーキュレーター市場で存在感があります。エアコンほど高価ではない扇風機類は、暑い年には買い増し・買い替え需要が発生しやすい商品です。クーラーは一度購入すれば10年前後使う耐久財ですが、扇風機は手頃な価格ゆえサブ的に追加購入されることが多く、猛暑で需要が喚起されると山善の販売増につながります。実際、同社は工作機械など生産財ビジネスが売上の6割超を占める一方で、利益率で見ると家電や空調機器など国内向け消費財ビジネスの方が高くなっています。つまり扇風機など夏物家電の好調は収益に与えるインパクトも大きいのです。今年度も増収増益・4期連続の増配見通しと業績は堅調で、地味ながら「扇風機の山善」というイメージから夏にはテーマ株の一角として市場の関心が高まる可能性があります。猛暑日はエアコンと併用してサーキュレーターを回す家庭も増えており、引き続き同社の夏商戦に注目です。
まとめ
例年以上の猛暑と異常気象が続く2025年の夏、日本企業にもさまざまな形でその影響が現れています。空調や電力など定番の業種はもちろん、飲料・食品、アパレル、流通、インテリアと意外な分野にもチャンスが広がっている点が興味深いところです。過去の実績や季節性データからも、猛暑特需による業績押し上げは確かな根拠があります。ただし、気候要因は一時的な面もあるため、投資の際には足元の業績動向や在庫状況、天候の長期予報などにも目配りが必要でしょう。とはいえ、猛暑という季節イベントは毎年巡ってくる可能性が高く、企業にとっても年に一度のビジネスチャンスです。この夏も引き続き暑さに負けず、業績を伸ばしていく企業に注目していきたいですね。

