データセクション(3905)株価急落の背景と直近動向 ~Wolfpackショートレポートの衝撃~

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Wolfpack Researchの空売りレポートが引き金に: 直近1週間の株価動向

2025年10月初旬、東証グロース上場のデータセクション(3905)の株価が急落しました。そのきっかけとなったのが、米ショートセラーのWolfpack Researchによるショートレポート公開です。Wolfpackは10月8日付で同社株に対し空売りポジションを取ったと発表し、これが市場に大きな動揺を与えました。同日の後場(日本時間午後)に株価は急速に崩れ、13時台には前日比で一時30%近い暴落となる場面もありました。実際、10月6日にはオーストラリアAIデータセンター関連の好材料で一時2,265円まで買われた株価が、Wolfpackレポート公表後の8日には1,410円まで急落する荒い値動きを記録しています。8日の終値時点で前日比-9%(1,499円)と大幅安を演じ、翌9日朝も売り気配で始まる展開となりました。短期間での急落ぶりから、投資家の間には狼狽売りが広がり、直近1週間は連日出来高急増・株価下落という混乱した値動きが続いたのです。

株価急落の背景には、Wolfpack Researchが指摘した同社ビジネスの根幹に関わる疑惑がありました。同レポートは「収益構造への重大な疑念」および「対中国向け輸出管理規制違反の可能性」という2つの論点を提起し、市場参加者の不安を一気に増幅させました。それまでデータセクションは生成AIやデータセンター関連の成長期待から注目を集め、特に7月には米エヌビディア製GPUを用いたAIスーパーコンピュータ構築計画の発表で4日連続ストップ高を記録するなど人気化していた経緯があります。しかしWolfpackの告発により一転、直近の株価上昇を支えていた好材料が「実はリスク要因ではないか」と受け止められ、投資家心理は急速に冷え込むことになりました。

以下、Wolfpack Researchが問題視した主な論点(収益構造と輸出規制)をそれぞれ掘り下げ、それがマーケットにどのようなインパクトを与え株価を動かしたかを検証します。また、この過程で顕在化した大口機関投資家の動向(大量保有報告書で判明した持株比率の変化)にも触れ、誰がいつどのように持ち株を手放したのかを可視化しながら解説します。

「唯一の大口顧客=Tencent」疑惑が浮上:収益構造への重大な疑念

Wolfpack Researchがまず指摘したのは、データセクションのAIデータセンター事業における収益構造への疑念です。その核心は、同社が「実質的に中国テンセント(Tencent)単一顧客に依存している」可能性でした。Wolfpackは調査の中で、データセクションが7月以降発表してきた「謎の大口顧客とのAIデータセンター契約」の正体がTencentであると断定しています。Tencentといえば中国のテック大手ですが、米国防総省から中国軍関連企業としてブラックリスト指定を受けている企業でもあります。Wolfpackはこの点に着目し、「データセクションの唯一の主要顧客がブラックリスト企業テンセントであると考えている」と公表しました。

この指摘が意味するところは、データセクションが発表したAIデータセンター事業の巨額契約(年間約1億3,500万ドル=約195億円規模)の相手方が、実は制裁リスクを抱える中国企業だということです。同社は7月10日に「世界最大級のクラウドサービスプロバイダーとの大口契約締結」を発表し、市場はこれを業績エンジンになる朗報として歓迎しました。事実、この契約額は同社前年売上高29億円の約7倍にも達し、株価は発表直後にサプライズ高でストップ高連発となった経緯があります。ところがWolfpackの報告によれば、その“世界最大級の顧客”とはTencentであり、契約自体もNowNaw Japanという関連会社を介した間接契約でTencent資金を仮面に隠したものだといいます。

この収益源の不透明さは、市場に大きな衝撃を与えました。なぜなら、もしTencentへの依存が事実なら、データセクションの収益構造は一社依存かつ極度に偏った脆弱なものとなるからです。しかもその一社は国際的に問題視されている企業であり、将来的に契約継続が困難になるリスクすら孕みます。投資家は、これまで成長期待で評価していたAIデータセンター事業が「テンセント頼みの一本足打法」であった可能性に愕然としました。Wolfpackはまた、CEOがこのTencent資金の後ろ盾を自社スタッフにも伏せていたとの元社員証言も紹介し、社内ガバナンスにも疑念を呈しています。こうした暴露により、データセクションの収益基盤そのものへの信頼が動揺し、保有リスクを感じた投資家の投げ売りが加速しました。実際、Wolfpackレポート公表直後から株価急落に拍車がかかり、8日後場には下げ幅が一段と拡大。マーケットは「大口契約=業績拡大エンジン」というこれまでの前提を覆され、大幅な株価調整でリスクプレミアムを再評価せざるを得なくなったのです。

株価への影響:ポジティブサプライズが一転、過去材料も否定的に捉えられる

収益構造への疑念が浮上したことで、以前ならポジティブだったはずの材料が一転してリスク視される状況となりました。その典型が、7月発表の大口契約とGPU調達に関するニュースです。前述の通り、7月の段階では「世界的大手との契約」「最新GPUサーバー到着」といった発表が相次ぎ、株価は急騰しました。しかしWolfpackの指摘後は、これら過去の材料も「実はテンセント絡みだったのでは?」という疑いの目で見られるようになりました。例えば、7月4日に公表された「NVIDIA B200搭載GPUサーバー調達・大阪でアジア最大級AIスーパークラスター構築」というニュースも、当時は夢のある成長ストーリーとして歓迎されましたが、Wolfpack報告後には「テンセント向け違法輸出の準備だったのでは」との憶測さえ呼ぶ始末です。マーケット心理は極端に振れやすく、好材料は手のひらを返したように疑心暗鬼の種に変貌しました。

株価面では、収益構造の不透明さが意識された8日以降、戻り売り圧力が強まり上値が重い展開となっています。Wolfpack報告前に2,000円台だった株価は、一度1,400円台まで崩れた後も買い戻しは限定的で、市場は依然として「主要顧客リスク」を織り込む状況が続きました。特に、「契約相手=Tencent」という疑惑は明確な否定材料が出ない限り払拭されず、投資家は様子見やポジション圧縮を余儀なくされています。以上のように、収益構造に対する信頼喪失はデータセクション株の魅力を大きく減退させ、Wolfpackの指摘した論点の中でも市場に最も直接的なインパクトを与えた要因の一つとなりました。

輸出管理規制違反の疑いと国家安全保障リスク: 市場心理への追い打ち

もう一つの重大論点が、対中国向け最先端GPUの違法輸出疑惑です。Wolfpack Researchは、データセクションがNVIDIA製の先端GPU「B200」を中国のテンセントに違法提供している可能性を示唆しました。米国では軍事転用可能な先端半導体の中国への輸出を厳しく規制しており、日本も対米協調の観点から輸出管理を強化しています。そのため、「日本企業がブラックリスト中国企業に最新GPUを横流ししている」との指摘は、経済安全保障上の大問題です。Wolfpackは調査結果をまとめた記事の中で、「NVIDIA製B200 GPUをテンセント等の中国企業に提供する行為は米国法に違反し、日本の国益にも反する」と明言しました。さらに同社は「この明らかに違法と思われる行為について、日本と米国の当局に既に通報済みだ」としており、国際スキャンダルに発展する可能性に言及しています。

この輸出規制違反疑惑は、収益構造の問題に輪をかけて市場を震撼させました。単なる一企業の業績懸念を超え、当局の調査介入や制裁リスクといった外部要因が現実味を帯びたためです。投資家にとって、もし当局が動けば事業停止や罰則、最悪の場合は上場廃止リスクにもつながりかねない重大事態となります。Wolfpackは報告書公開と同時に日本および米国の関係当局に調査結果を共有済みであると述べており、この情報が伝わると市場参加者は「当局の出方次第では取り返しのつかない事態になる」と敏感に反応しました。結果的に、株価へのネガティブインパクトはより深刻なものとなりました。

株価への影響:違法性への懸念で投資家が逃避行動

輸出規制違反の懸念が浮上したことで、データセクション株は極端なリスク回避売りに晒されました。とりわけ海外投資家や機関投資家はコンプライアンス上の理由からこの種のリスクに敏感で、Wolfpack報告後には「問題が解明するまで近寄れない」として一斉に資金を引き揚げる動きが見られました。9日朝に株価が売り気配スタートとなったのも、違法性を警戒する向きの注文が殺到したためと考えられます。事実、9日には寄り付き前に大口売り注文が積み上がり株価は大幅安で始まる異常事態となりました。その後も終日軟調で推移し、2日間で株価は約30%も急落しています。

市場心理面でも、「国際問題に発展する恐れ」というフレーズが強烈な不安を呼び起こしました。投資家はデータセクションを単なる高ボラティリティのグロース株ではなく、規制当局や外交問題に絡むリスク資産とみなすようになりました。特に年金基金など長期資金を運用する機関投資家にとっては、違法行為疑惑のある企業を保有し続けること自体が許容できず、ポートフォリオから外す判断が下されやすくなります。例えば、世界最大級の政府系ファンドでESG投資を重視するノルウェー政府年金基金(GPFG)などは、「企業行動が法令や国際規範に反する場合には厳正に対処する」と常々表明しており、このような疑惑が浮上した銘柄からは即座に撤退する可能性が高いと言えます(※同基金が実際に当銘柄を保有していた場合の仮例ですが、ESG重視の姿勢から十分起こり得る対応です)。こうした機関投資家の資金流出も株価下落に追い打ちをかけました。

また、業界内からも懸念の声が上がりました。国内クラウド事業者であるさくらインターネット社長の田中邦裕氏は、Wolfpack報道とデータセクションの否定コメントが出たタイミングで、「怪しいGPU提供をする企業が存在することは日本の地政学的優位性において非常に憂慮すべきこと」とX(旧Twitter)に投稿しています。名指しは避けつつも明らかに本件を意識した発言であり、産業界からも疑義が呈された形です。このように社外から「安全保障上問題だ」と指摘される状況そのものが風評リスクとなり、市場参加者は将来的な取引停止や行政指導など最悪のシナリオを想定せざるを得なくなったのです。結果、データセクション株は短期間で急落し、その後も不安定な値動きが続いています。

会社側の対応:全面否定も収まらない不信感

データセクション社は、Wolfpack Researchの告発に対して即座に公式否定の姿勢を取りました。8日夜から9日未明にかけて同社はプレスリリースや関係各所への連絡を行い、「当該記事で指摘された違法行為の事実は一切ない」と強調しました。また「外部専門家(米国および国内の弁護士)に確認のうえプロジェクトを進めており、法令遵守している」と説明し、必要があれば速やかに開示も行うと表明しています。この発表を受け、同社株は9日朝の寄り付き後に一時下げ渋る動きも見せました。しかしながら、会社側の否定声明だけで市場の不信感を払拭するには不十分だったと言えます。

実際、否定コメントが出た直後も売り圧力は依然強く、株価は下げ幅を拡大する展開となりました。前述のさくらインターネット社長の発言もあり、否定にもかかわらず「火のない所に煙は立たない」と見る向きが少なくなかったのです。さらにWolfpack側も黙っておらず、SNS上で「我々は確信している」「当局に既に情報提供済み」と強気の姿勢を示したため、投資家はどちらを信じるべきか判断しかねる状況に置かれました。結局、会社側が具体的な証拠や契約相手の開示など踏み込んだ説明をしない限り、市場の疑念は完全には晴れないでしょう。否定発表自体は迅速でしたが、疑惑の核心(契約相手や輸出手続の詳細)に触れていないため、依然として「グレー」という評価を受けているのが現状です。

大口株主の動向:機関投資家の売却と持株比率の変化を可視化

この一連の騒動の中で浮き彫りになったのが、大口機関投資家による持ち株手放しの動きです。大量保有報告書(5%ルール報告)によれば、データセクションの主要株主だったKDDI株式会社および日本生命保険が9月末から10月初めにかけて相次いで同社株を売却し、保有比率を大きく減少させていることが判明しました。以下に、その動きを時系列で整理します。

  • KDDI株式会社(通信大手、業務提携先でもあった)
    データセクション株を元々15%以上保有する筆頭株主の一角でしたが、2025年9月26日から断続的に株式売却を実施。9月26日時点で約14.8%あった保有比率は、9月29日に7.51%まで低下、さらに10月2日には5.08%、10月3日付で3.70%まで減少しました。この結果、KDDIは5%未満となり大量保有報告の義務対象から外れる水準まで持ち株比率を落としています。実質的に主要株主から撤退した形であり、市場では「提携関係にあったKDDIが見切りをつけたのではないか」と波紋を呼びました。KDDIの売却はWolfpackレポート公表より少し前のタイミングから始まっていますが、ちょうど同社株が高値圏(2000円超)のうちに利益確定を図ったものと考えられ、結果的にその先見性が注目されました。
  • 日本生命保険(ニッセイ)(国内大手機関投資家)
    数%台後半の株式を長期保有していましたが、2025年9月30日付の報告で保有比率が0%(5%未満)になったことが確認されています。報告義務発生日は9月30日で、保有割合の変動は-6.69ポイントとなっており、ほぼ全株を市場で売却処分した計算です。ニッセイは自社の運用方針としてESGやコンプライアンスも重視する傾向があります。ちょうど9月末から10月初旬といえばWolfpackの動きを含め不穏な空気が出始めた時期であり、同社がリスク回避のため早々に資金引き揚げを決断した可能性があります。

上記2社はいずれもデータセクションの安定株主と目されていた大口投資家であり、その売却は市場に少なからず衝撃を与えました。とりわけKDDIは業務面での協業関係もあったため、「AIデータセンター事業に将来性があるならKDDIが売るはずがない」との見方も一部で出ています。このことは裏を返せば、内部のパートナーですら将来性に疑問を感じた(あるいはリスクが高いと判断した)可能性を示唆しており、市場の不安心理を増幅させました。

一方で、この混乱期に逆張りで持ち株比率を高めた投資家も存在します。大量保有報告書によれば、個人投資家の杉原行洋氏が9月中旬以降に同社株を積極的に買い増し、9月26日には21.14%まで保有比率を引き上げたことが確認されています。杉原氏は9月12日に5%超の大株主となった後も買い進め、KDDIやニッセイの売却分を吸収するようにポジションを拡大した形です。最終的に10月2日時点の報告では19.99%を保有し筆頭株主に躍り出ました。この動きについて市場では、「杉原氏は同社経営に関与する意図があるのでは」「安値拾いの達人かもしれない」など様々な憶測が飛び交いました。しかし少なくとも短期的には、杉原氏の買い支えが急落する株価の下支え要因となった面もあります。大口の売りを別の大口が受け止めたことで、一方的なパニック的下落は避けられ、10月中旬時点では1,300~1,600円レンジで何とか下げ止まっている状況です。

まとめ:疑惑解消と信頼回復がカギ、先行き不透明感は拭えず

データセクション(3905)のケースは、ショートセラーの告発がいかに市場に大きな影響を及ぼすかを示す典型例となりました。Wolfpack Researchのレポート公開以降、同社株は主要顧客を巡る不透明感と違法性リスクに晒され、株価は急落・乱高下を余儀なくされました。特に、Tencent依存の収益構造や輸出管理違反といった指摘は、単なる業績の上振れ下振れを超えた企業の存立に関わる信用不安を引き起こし、機関投資家の資金流出や提携先からの見切り売りを誘発しています。

もっとも、現時点でWolfpackの主張がどこまで事実かは確定していません。データセクション社は全面否定の姿勢を崩しておらず、今後も必要に応じて法的措置も含め対応するとみられます。ただ、市場は「クロ」と判断すれば容赦なく制裁を与えるものです。仮に誤解や行き過ぎた疑念であった場合でも、投資家の信頼を取り戻すには相当の時間と説明努力が求められるでしょう。具体的には、契約相手の開示や当局のお墨付き(違法でないとの確認)など、透明性を高める情報開示が不可欠です。

現状、データセクション株の評価には大きな割引(リスクディスカウント)がかかったままです。株価指標面でも急落により時価総額は300億円台前半まで縮小し、7月のピーク時から見ると半分以下の水準となっています。これは市場が成長期待よりも疑惑リスクを重く織り込んでいる証左と言えます。今後、もし疑惑が晴れてTencent以外にも顧客基盤を広げられる見通しが立てば、株価は見直される可能性があります。しかし反対に、当局の調査や追加の不利な材料が出れば、さらなる下振れもあり得る高リスク銘柄である点は否めません。

最後に今回の件を教訓として指摘できるのは、「マーケットの信頼」を失うことの怖さです。どんなに魅力的な事業計画や大口契約があっても、その裏付けとなる事実関係が不透明であれば、投資家は疑心暗鬼に陥ります。一度疑惑の目で見られると、企業側の弁明も額面通りには受け取ってもらえなくなります。データセクションはまさにそうした状況に直面しており、信頼回復には地道な情報開示と実績の積み重ねが必要でしょう。